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浜プランとは

「浜の活力再生プラン」(通称「浜プラン」)は、2014年に始まった、水産業の活性化のための改革の取組です。地域によってさまざまに異なる水産業・漁業を振興させることを目指して、それぞれの漁村や地域(=「浜」)の現状に合わせて考えられた取組計画を「浜プラン」と呼びます。
 

浜プランは、誰が?

浜プランは、漁業者や市町村を中心に組織された「地域水産業再生委員会」が、課題・計画・目標を見据えて立案します。
 

浜プランは、何のために?

その大目標は、「漁業所得の10%アップ」。収入を向上させる取組、コストを削減する取組など、多種多様な具体的なプランが実践されており、2017年8月現在、北海道から沖縄まで、全国で640を超える浜プランが策定されています。
 

浜プランは、何をする?

浜ごとに策定される浜プラン。浜の数だけ課題があり、取組が行われています。大きくは以下のような取組が全国の浜で取組まれています。

<収入向上の取組>
高鮮度出荷・加工品開発、直販・輸出など
<コスト削減の取組>
省エネ機器の導入・協業化・船底清掃の取組実施など
 

つまるところ、浜プランって?

浜プランは、「地域活性化のための処方箋」です。
各地域が抱える課題に対し、漁業者と市町村がタッグを組んで自ら考えた解決策を実践することに、浜プランの本質があります。漁業や水産業の改革によって地域全体を元気にすること、「地域創生」に貢献することが、それぞれの浜プランの役割です。

大分県漁業協同組合 津久見支店

津久見地区地域再生委員会

タイは都市へ、イカは地元へ!
「今あるもの」を活かす出荷戦略

販路の拡大や開拓など、商品をどこへ出荷するかについての検討は、鮮度が求められる漁業においては特に難しい課題であることに間違いない。大消費地への開拓か、地元での拡大か。大分県 津久見で取組まれ、収益向上に貢献した販路選択のための工夫をご紹介!

目次

世界的にも希少な地層をもつ、大分 津久見

大分市から南東に30kmほど行った大分県 津久見市は、ミカンとマグロの町として知られる。瀬戸内海と太平洋をつなぐ水道、豊後水道に面し、対岸には四国を臨む。名所の一つ、津久見湾内にある無人島、網代島(あじろじま)には、海洋プランクトンが堆積して形成された岩層が見られ、それらは太平洋の中央部で作られ、長い年月を経て現在の位置に移動した世界的にも希少な地層だと言われている。その証拠に2011年、この地層から世界最古の2億4千年前の宇宙塵が回収され、特に地質学者や宇宙学者から、津久見 網代島は宝の山だと言われている。

太平洋と瀬戸内海の湿気が流れ込むこの地域は、温暖で大きな寒暖の差がない地域だが、近年、豊富な水資源が要因となり、大雨・水害に見舞われることも少なくない地域でもある。

津久見の漁業が抱える、次世代問題

津久見湾の海岸線は78kmに渡り、複雑なリアス式海岸からなる。大分県漁業協同組合は、この湾内に2つの支店を構えている。マグロ延縄の遠洋漁業の基点である保戸島支店と、アジ、サバ、イワシなどのまき網漁を中心とするほか、釣りや網などでタイ、イサキ、タチウオ等を獲る津久見支店だ。

豊富な海洋資源に恵まれた沿岸漁業を営む津久見支店。ここ数年の漁獲量は安定しているものの、将来的な課題を抱えていることも事実だ。構成する正・准組合員、約500名の内78%が60代以上から成り、10年前に比べると10%程度増加、特に50代の低下割合が目立ち、高齢化に拍車をかけている。

高齢化の課題はもちろん、近年の魚価の低迷、燃油価格の高騰も相まって、厳しい経営状況に置かれているのが、津久見支店の現状だ。

価格を裏付けるのは、高い品質

そうした現状に対し、「浜の活力再生プラン(浜プラン)」で目標として掲げられる漁業所得の10%向上のため、津久見支店が目を付けた魚種が、都市圏で人気のあるマダイと、地元で「モイカ」の名で知られるアオリイカだった。

都市部への販路開拓や、地元での販路拡大など、販路に関わる取組は全国各地で取組まれているものの、単に出荷先を確保するだけでは当然うまくいかない。特に都市部に対しては、高い鮮度を維持したまま、良い味の魚を提供することが出来なければ、多くの食材が集まる大消費地で打ち勝つことは難しい。

津久見では、県内で先駆けて神経締めによる漁獲物の品質・価値向上に取り組んでいて、マダイもその対象魚種の一つだった。地元よりも関東・関西といった都市部で値段が付きやすいマダイであれば、多少の運送コストがかかっても、品質が良ければ高い値段での取引が期待できるのではないか、そう考えたのが津久見の浜プランの始まりだ。

浜の活力再生プラン ブロック推進会議 事例報告資料(2017年9月19日開催)

求められる場所を見極める市場調査

津久見で神経締めされたマダイには「神経抜き」というラベルが貼られ、他の魚との違いが見た目でわかる状態で出荷される。だが、どれだけ品質が良くても市場で求められる規格に合わなければ、高値での取引は期待できない。そこで津久見支店では、出荷先となる市場の調査が重視された。

平成23年、試験的に京都中央卸売市場に出荷を始め、翌年に視察に出向くと、関西方面のニーズとして「1kg以上」という広い幅での規格ニーズがあることがわかってきた。次いで平成25年に関東方面への試験出荷として横浜中央卸売市場へ出荷し、翌年にまた視察に出向くと、幅広いニーズがある関西とは違い、「1~2kg」という狭い範囲で高値の取引が行われていることが判明した。

あるときの出荷経費はそれぞれ、京都へは88円/kg、横浜へは219円/kg程度で、津久見支店のマダイの規格からすれば、経費が安く、求められる幅も広い関西方面への出荷が適していると判断された。

浜の活力再生プラン ブロック推進会議 事例報告資料(2017年9月19日開催)

市場視察のポイントは、「把握」「見極め」「検討」

津久見支店の市場調査は、まず「試験出荷」を行い、翌年に「市場視察」に出向くという流れで行われたのが特徴だ。当然、重要なのが市場視察であり、津久見では事前に次の3点の問題意識を持って臨まれた。
①規格ニーズはどのようなものか、②試験出荷しているマダイの評価はどうか、③(継続であれば)さらに加えるべき価値は何か、という点だ。これらを言い換えれば、以下のような流れが津久見の市場視察では意識されていたと言える。

①市場のニーズの把握
②それに対する評価の見極め
③改善策の検討(もしくは、撤退の判断)

京都では1kg以上の規格というニーズの把握に対し、津久見のマダイは規格が適している上、現状の鮮度であれば評価が得られていることが確認され、現状の品質を維持してマダイを出荷し続けることができれば、継続的に取引ができると期待できた。

一方横浜では、長期の運送による鮮度低下が心配されたものの、品質的には高評価が得られていた。だが、1~2kgの限られた範囲の規格ニーズであることから、京都を通じた関西方面への出荷が優先度が高いと判断された。

浜の活力再生プラン ブロック推進会議 事例報告資料(2017年9月19日開催)

視察に基づいた、戦略的な出荷コントロール

それぞれの中央卸市場の魚価だけで見ると、平成26~28年の平均では、地元1,009円/kg、京都1,293円/kg、横浜1,753円/kgと、先の運送経費(京都88円/kg、横浜219円/kg)を差し引いても、横浜を通じた関東方面への出荷が望ましいように思える。

だが、市場視察を元に津久見で判断された出荷割合は、例えば平成26年から27年にかけての実績では、京都へを全体の31%から38%へ引き上げることとし、横浜へは3%からほぼゼロとした。横浜の方が取引単価は高いかもしれないが、規格ニーズに限りがあり、その分、規格落ちのリスクもあると想定された上での判断だった。横浜方面への出荷はその後も継続しているものの、こうした判断に基づいて出荷先をコントロールしている様子が見て取れる。

取引魚価だけで出荷先を判断することは、一時的な向上効果は期待できるが、長期的に考えれば、次第に先方で求められるニーズと、こちら側が用意できるものとの間とにひずみが生じ始めることが明らかだ。「求められるもの」の把握と「用意できるもの」ものとの適性を見極め、背伸びしすぎない判断が長い目での漁業所得の向上につながっていくのではないだろうか。

浜の活力再生プラン ブロック推進会議 事例報告資料(2017年9月19日開催)

労力と魚価は比例する。努力した分、魚価は上がる

大分県漁協 津久見支店や津久見市とともに取組を進めてきた、大分県 中部振興局の水産班で普及員を務める吉岡宗祐氏は、この取組とその成果を、下の極めてシンプルな図を用いて説明する。

労力と魚価は比例関係にあって、「元々あった魚を、神経締めするなどの労力をかければ、少し価値が上がり魚価も上がる。さらに、それまで地元のみへの出荷であったものを都市市場へ進出するなど、それ以上に労力を掛けると魚価も見合う以上に高いものが得られるようになる」

浜の活力再生プラン ブロック推進会議 事例報告資料(2017年9月19日開催)

地産地消のための、もう一つの取組み

津久見支店で取組まれたのは都市部への販路開拓だけではない。地産地消、販路拡大のため、地元で「モイカ」と呼ばれるアオリイカを使った観光の取組にも力が注がれた。

魚群探査機などレーダー装置を使わず行き当たりバッタリで行うことから「バッタリ漁(正式名:雑魚船曳き網漁)」と呼ばれる伝統漁法が、モイカ漁では今もなお行われている。モイカは、他のイカと比べて独特の甘みがあり「イカの王様」とも呼ばれ、高級食材として扱われる。9~3月頃にかけて行われるモイカのバッタリ漁だが、特に11月頃に値段が下がる傾向があり、漁師たちの頭を悩ませていた。

その一方、津久見市観光協会は、9月に開催されるご当地のマグロを使った「ひゅうが丼」フェアから、2月に盛り上がりを見せる河津桜のイベントの間に大きな催事がなく、この閑散期のテコ入れが必要だった。

共通した時期に悩みを抱える漁師と観光協会の2者が手を組んで、平成23年から始まったのが「津久見 モイカフェスタ」企画だ。

浜の活力再生プラン ブロック推進会議 事例報告資料(2017年9月19日開催)
津久見市観光協会HP

漁師・漁協・料理人が一体になるイベント

モイカフェスタの内容は、モイカ料理を提供する津久見駅周辺にある料理店7店舗ほどと、企画参加店である約5店の菓子店などでの飲食・購入に応じてスタンプを贈呈し、スタンプ2つごとに懸賞商品への応募ができるというスタンプラリー企画だ。

この企画のポイントは、観光協会が単独で企画運営するものではなく、バッタリ漁を行う漁師と、水揚げされたモイカを集荷・蓄養する漁協、それを調理する料理店の3者が一体になることを目指し、観光協会が積極的に調整機能を果たして、地域ぐるみで開催している点にある。

それまでは秋から冬にかけては市の観光事業としては空白期間になっていた。モイカフェスタを開催することによってその穴が埋まった上、市内外はもちろん観光客を誘致することにつながり、今では毎年1万食を提供する一大地域イベントにまで発展している。

地域と漁業の両方への効果、モイカフェスタ

モイカフェスタは、地域に対するプラス効果をもたらしただけではない。漁業者にとっての効果、つまり魚価の向上にも大きく貢献している。

当初、漁業者の頭を悩ませていた11月のモイカの単価について、モイカフェスタ開催以降から顕著な向上が見て取れる。グラフは、モイカの11月の月平均単価から、年平均単価を引いたものの推移だ。モイカフェスタ開催前の平成22年までのグラフはマイナスを示しており、つまり11月の単価が年平均よりも低かったことを意味している。それがフェスタ開始後の平成23年以降、大きく向上していることがわかる。

モイカフェスタの取組は、単純な「連携」の一言に留まらない部分がある。調整役となった観光協会は料理店への理解を得るための対話を行い、漁協は欠品しないための蓄養技術を習得した。漁師はモイカを漁獲するだけではなく、資源がなくらならないようにと手作りの産卵礁を設置するといった資源管理にも努めている。それぞれが知恵を出し、地域全体のために考えたからこそ得られた成果だといえるのではないだろうか。

浜の活力再生プラン ブロック推進会議 事例報告資料(2017年9月19日開催)

いま手元にあるものに価値を与える工夫

漁協とともに浜プランを推進した津久見市 農林水産課の高野龍氏は、津久見の浜プランを次のように捉えている。

マダイの都市部への出荷、またモイカフェスタの取組、いずれの取組でも、津久見で行われたことは「今までもあったものをどう売るか」ということに重きが置かれている。

課題の解決策として一般的に考えがちなのは、斬新で、革新的な取組を作り出そうという点に目線が向きがちだが、津久見で意識されたのは、神経締めされたマダイや伝統漁法で獲られるモイカといった、既にあるものにどうやって価値を付けるかということだった。

所得を向上するためには、過去の偉業や産物を封印し、新たなものを導入することこそが絶大な効果・効能をもたらすものと考えがちだが、必ずしもそうではない。津久見の浜プランは、いま手元にあるものに労力を掛ければ、比例して価値が高まっていくことを証明してくれている。

(執筆日:2017年11月7日)

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