糸島漁業協同組合

糸島市地域水産業再生委員会

農林水産大臣賞 受賞!
糸島が元気になるために!漁業を起点とした地域活性化!

2018年度に開催された浜の活力再生プラン優良事例表彰において、栄えある農林水産大臣賞を受賞した糸島市地域水産業再生委員会(糸島漁協)。高鮮度出荷や6次産業化、直売所の運営など様々な取組により、漁業を核とした地域活性化に貢献した浜プランをご紹介!

目次

地の利を活かした取組を展開

糸島漁業協同組合がある糸島市は、福岡県北西部、福岡市と佐賀県唐津市の中間に位置する街だ。
主要都市である福岡市の中心部から鉄道や自動車で約30分、交通アクセスが良いことから、ベッドタウンや福岡近郊の身近な観光地として定着化している。

観光客に人気の理由はきれいな景色や美味しい海産物など。福岡県指定の名勝「白糸の滝」や「日本の夕日100選」に選ばれている「桜井二見ヶ浦」に並び、糸島のカキ小屋は冬の名物として定番観光スポットとなっている。

1枚目 白糸の滝:Wikipediaより
2枚目 桜井二見ヶ浦:Wikipediaより

持続的な漁業の実現へ向けて

糸島漁業協同組合では従前より水産物の地産地消に向けた取組を推進しており、2006年には観光協会とともに直売所「JF糸島 志摩の四季」を設立した。2013年度には、カキ養殖業者自らが各漁港に「カキ小屋」を設立、シーズンを中心に地元福岡のテレビ等で紹介されることから、10月~4月の時期は大勢の観光客と地元の人々で大変な賑わいを見せている。

一方で糸島漁業協同組合は、水揚量の減少等から限りある資源を有効に利用し、その価値を最大限に高める必要性を感じていた。そこで、漁獲の増加していたサワラや来場者が年々増えるカキ小屋から排出されるカキ殻などに着目し、今後の漁業を持続的に発展させるため、事業面や地理的なメリットを最大限に活かす仕組み作りに注力している。

JF糸島「志摩の四季」、カキ小屋

漁師のこだわりの魚を直売所で販売

現在、組合全体の総水揚量は約3,100t(2018年3月末現在)のうち約4割が直販事業向けとなっており、これには、直売所の事業JF糸島「志摩の四季」の取組が大きく寄与している。

当直売所の一番の特徴は、魚の超鮮度だ。鮮魚に関して出荷者は組合員のみとし、鮮魚は漁獲後直ちに陳列されその翌日入れ替えられ、売れ残ったものは出荷組合員が持ち帰る仕組みとなっている。

また当直売所は委託販売の形態をとり、漁業者は自ら鮮魚をパック詰め・値付け・陳列することに加え、陳列棚は8ある組合の支所毎にレーン分けされ、商品の品質向上を図るため、漁業者間での神経抜き等の技術やパック方法、値付け等について競争を促している。

この他、陳列棚の上にはモニターが設置され、消費者は来店前からホームページで店内商品の品揃え状況を確認できることや、直売所は購入した鮮魚を購入者の希望で無料で捌くサービスを行ったりと、訴求力の向上やリピーターの確保のための取組が随所に見られる。

漁業者は自らパックする、支所毎にレーン分けされている

地道な取組により地域に不可欠な存在に

糸島漁業協同組合の吉村参事は、近隣の量販店における鮮魚売場が非常に狭いことに気付いた。この理由について、吉村参事は「糸島市は直売所の激戦区。量販店は、鮮魚のレベルが高い直売所に対抗できないからではないか。」と語る。

事実、直売所JF糸島「志摩の四季」は、地元のみならず、福岡近郊の飲食店関係者も開店前から列をなすほどの人気ぶりだ。現在、年間売上高は6億円を超え、来客数は年間43万人(レジ通過人数)に達している。

店長の柴田さん

カキ小屋が冬の代名詞となるまで

糸島漁業協同組合は、冬期の時化(しけ)による漁業収入の安定のための対策としてカキの養殖を導入し、併せてカキ小屋の運営・直接販売を開始した。

カキ小屋が糸島の観光名物となった理由の一つは、その積極的なPR活動の成果だ。西日本鉄道や熊本電気鉄道とタイアップし、外国人のインバウンド客の誘致にもつなげている。また、日本郵便やヤマト運輸等とタイアップし、年間25,000パック程度を直売所より発送する他、日本郵便には郵便局にカキ小屋のパンフレットを設置してもらっている。各社との連携による相乗効果も狙っている。

また、カキ小屋では地元中学生の職業体験の受入を行っている。直近では全体で45人を受け入れたが、人気を博し、中学校から受入の増員を依頼されるほどだ。カキ小屋に愛着を持ってもらい将来のサポーターを増やすため、参加者にはカキをお土産に持たせたり、カキの昼食を提供するなどの工夫をする。

その結果、現在、4漁港にてカキ小屋27店舗と2漁港にて3軒のカキ販売所がそれぞれの漁業者により運営され、カキ小屋来場者数は53万人(2017年度)、カキ小屋におけるカキ売上高は5億数千万円に達するほどとなった。

焼きガキは1㎏1,000円

異業種との連携により、環境負荷も低減

一方、カキ養殖が定着し、規模拡大・生産量が増加するにつれ、排出されるカキ殻が増え、生産者や自治体はその処理コストに悩まされていた。年間に廃棄されるカキ殻は1,200tで、そのうちカキ小屋から廃棄されるものは500tほどに達する。

そこで糸島漁業協同組合は、県・市・九州大学と共にカキ殻・リサイクルプロジェクトを設立。協議と試験を重ね、カキ殻を使用した土壌改良剤「シーライム」が完成した。その後、「水産物リサイクル推進協議会」が発足。カキ小屋でのカキ殻の回収・分別は漁業者、カキ殻肥料の開発はJA糸島、肥料会社、県が担当することとなった。地域一体での環境負荷の低減の取組は糸島のイメージアップにつながっている。

シーライム用のカキ殻

厳しい管理で、国産天然ハマグリの資源を立て直す

糸島の加布里(かふり)干潟は、古くから貝類の好漁場だった。一時的に資源が枯渇していたものの、平成に入りハマグリの資源の回復が見られたのを契機に、漁業者自らが組織を作り(ハマグリ会)、厳しい資源管理に取り組んだ。

資源管理の内容は、①採捕はハマグリ会の会員のみ、②採取期間は11月から3月の大潮(満潮と干潮の潮位差が大きくなる時期)時に限定、③操業時間は1日3時間まで、④採取量は1日10㎏まで、⑤採捕は殻長が県規制の4㎝を上回る5㎝以上のものに限定、の5つが挙げられる。この管理体制が奏功し、現在、漁獲量は10~13t程度まで増加した。

また単価向上の取組として、ハマグリでは日本初のマリンエコラベルの取得や、高単価で取引される関西方面への出荷、地元でのPR活動や宅配業者との相対取引を増やすなどを積極的に行い、単価は取組前(1998年)に比べ、倍の2,000円/㎏(2017年)に上昇した。

「筑前海加布里産天然蛤」

仲間に続け!サワラの高鮮度処理も厳しく管理

福岡市場においてはフグやヒラメといった魚と比べ、サワラの付加価値向上や魚価向上が課題とされていた。そこで、糸島漁業協同組合では、取引価格水準の高い岡山市場に焦点を当てた 。同市場の価格や需給の動向を入念に調査し、身が固く締まった状態を維持する品質保持が重要であることを分析。これを踏まえ、漁獲後の船上での処理から冷却、箱詰めまでの過程にかかるマニュアルを作成した。

この高鮮度処理したサワラを「特選本鰆」として統一規格で出荷することや、出荷時に漁協承認のタグとシールを貼り他地域と差別化を図ることで、サワラの高付加価値化に努めている。
また、地元では「糸島さわらフェア」を開催し、「特選本鰆」を使った料理を地元の飲食店18店舗にて提供するなどPR活動も行っている。

その結果、サワラの単価は通常処理の出荷の981円/㎏に対し、高鮮度処理を施したサワラは1,156円/㎏で取引されるまでになった。また、福岡市場でもこのサワラが評価されるようになったことから、現在は出荷量の一部を福岡市場に戻すことも出来、出荷コストの軽減も図れるようになった。

高鮮度処理されたサワラ、「特選本鰆」タグ

マーケティングによる商品開発も

漁師の間で「そうめんのり」として親しまれている「ふともずく」は、地元ではあまり知られていなかった。その知名度向上のために取り組んだのは、マーケティングを勉強している女子高校生とのコラボによる販路拡大だ。新たな商品パッケージを作成し、生協等で販売されるようになった。

この取組は、農林水産省から表彰されるとともに、女子高校生がプロデュースしたふともずくのスープやサラダの全国販売に繋がり、知名度向上に大きく貢献した。

ふともずくを紹介する博多女子高校の女子高校生、ふともずくのPR写真

活性化の第一線に立ち、地域を巻き込む

糸島漁業協同組合は、以上のような様々な取組を行っているが、漁船漁業や養殖業、女性部や後継者等の幅広い漁業者が参加した取組であり、漁業所得向上のみならず、漁業者全体の意識向上に繋がり、まさに浜の活力となっている。

さらに、地元JAや学校、異業種を巻き込み、地域全体の連携、活性化に繋がり、県内外から注目を集めているところだ。

糸島漁業協同組合 吉村参事は「今は市やマスコミでJFというワードが頻繁に使われている。JFの知名度が向上していることを実感している」と話す。漁業を核として地域活性化が実現している事例といえよう。

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