三重外湾漁業協同組合 神前浦事業所錦

大紀町地域水産業再生委員会

地域内外に視野を向けて
高レベルの生産・加工・流通を構築!

『大紀町漁業活性化推進協議会』を発足し、地域ぐるみで浜の賑わい創出に取り組んだ三重県・大紀町地域水産業再生委員会。生産から販売に至るまでの多岐に渡る取組により、地域への貢献にも繋げることができた。
今回は、2018年度浜の活力再生プラン優良事例表彰にて水産庁長官賞を受賞した、当地区の取組をご紹介!

目次

大紀町で唯一の漁村、錦地区

三重外湾漁業協同組合神前浦事業所錦は三重県の南部地域に位置する大紀町のうち、唯一の漁村である地区だ。
大紀町の人口は8,600人あまりで、県内29市町内でも少ないうえ、65歳以上の人口の割合は県内でも上位に位置する。

大紀町の第1次産業就業者比率は高く、水産加工業等に従事する者も多い。漁業単体の問題ではなく地域社会全体の問題として、関係者が一体となって漁村活性化に取り組むことが求められている地域だ。

大紀町

組織間の連携による相乗効果を狙う

当地区では、漁業者、漁協、町、仲買人、女性部、遊漁船業者からなる「大紀町漁業活性化推進協議会」が組織され、漁業及び地域の活性化を図るための協議等が行われている。この協議会の主要な構成員は、当委員会とも重複していることから、両組織が連携を図りながら、浜プランの取組を実施している。
さらに、商工会や観光協会等から組織されている「大紀町地域活性化協議会」とも連携を図っており、浜プランに掲げる地域活性化の取組の着実な実施を後押ししている。

大紀町地域水産業再生委員会 事例報告資料より

三重県のサラブレッド「伊勢まだい」

大紀町地域水産業再生委員会は、2011年度以降、三重県漁連と連携し品質の高い養殖マダイとして「伊勢まだい」の生産に取り組んでおり、2017年度の生産量は161tと、浜プラン取組初年度(2014年度)39tの約4倍にも達している。
「伊勢まだい」生産の特筆すべきところは、与える餌に三重県特産の海藻類、柑橘類、伊勢茶の粉末を加えていることだ。専用の粉末を出荷前に14日間以上給餌するコストと手間を伴うものの、これにより臭みや脂分が少なくさっぱりとした身質が評価されるようになった。JAL国際線のビジネスクラス機内食にて県産食材として2017年の6月~8月に採用されたり、首都圏等のスーパーからの引き合いが年々増加するなど、認知度が向上するとともに、漁業所得の向上に寄与している。

「伊勢まだい」

ブリ、カワハギ、新たなタイの養殖も

「伊勢まだい」の取組のほか、同様の手法と取り入れた養殖ブリ「伊勢ぶり」の生産の実施や、複合養殖として取り組んでいる人工種苗を用いたカワハギ養殖は導入以降、高値(2017年度平均2,334円/㎏)で取引され、同様に漁業所得の向上に寄与している。

また、2017年度以降、健康機能成分として着目されているDHAやEPA成分を強化したオイル(タラ、菜種)を餌に加えた新たなブランド魚「伊勢黒潮まだい」の生産を開始しており、今後のさらなる収益増加が期待されるところだ。

カワハギ養殖の様子

「漁師の味をプロの技術で」

加工分野においては、漁業者やその配偶者、地区女性部から組織される「魚々錦会(とときんかい)」により、開発・販売にあたった。キャッチフレーズは、「漁師の味をプロの技術で家庭に届けたい」。女性部を中心に、「伊勢まだい」の加工品や、規格外の魚や低・未利用魚を活用した加工品の開発や販売を行っている。

特に「まだいの塩麹焼き」は、第3回Fish-1グランプリで準グランプリを受賞し、当地区を代表する人気商品だ。また、郷土食をベースにした「べっこうずし」や「ぶりひつまぶし丼」は、東海地方のグルメ雑誌にも多く取り上げられるなど、注目されている。これも、「魚々錦会」のプロ意識によるものであるといえるだろう。

「まだいの塩麹焼き」、「ぶりひつまぶし丼」、直売所「魚々錦」

移動販売で中山間地に海の恵み

当地区では、魚食普及のみならず、移動販売車を活用して、買い物難民の懸念すらある中山間地へ水産物を供給することで、周辺地域や高齢者の日常生活の一端を支えている。2014年度は149回/日だった巡回日数を2017年度には271回/日増加させるなどし、販売金額を2014年度の約1.6倍(1,294万円)まで増加させることが出来た。

また、2009年から開催している「錦ぶりまつり」では、定置網で漁獲された新鮮なブリや加工品の販売、郷土料理の提供などを行ったり、「田舎暮らし体験ツアー」においてはアジやサバ等の干物づくり体験プログラムを提供するなど、PRにも力を入れている。これらの取組は当地区で水揚げされる漁獲物の魚食普及や消費拡大に寄与しているほか、地域外からの集客にも貢献している。

移動販売車「魚々錦号」、移動販売の様子、錦ぶりまつりの様子

担い手の確保にも取り組む

当地区でも課題となっている担い手の確保。漁業者の高齢化に伴い漁業者数が減少する中、地区外からの新規就業者の確保を目的に、2017年度から「錦漁師塾」を立ち上げ、大型定置網漁業や魚類養殖を対象とした漁業体験を開催した。

また、高齢化する漁業者の安定的な収入確保を目的に、初期投資が少額で特別な技術を必要とせず、かつ1カ月程度の短期間で収穫が可能な海藻「ヒロメ」の養殖を開始している。このヒロメについても、大紀町漁業活性化協議会の水産物直販施設「魚々錦」が主体となり、塩蔵ヒロメを細かく刻んだ麺タイプの加工品を開発するなどして更なる漁業所得の向上に取り組んでいる。

錦漁師塾の様子、ヒロメ養殖の様子

幅広い取組が地域の課題解消に

当地区では生産から販売まで各々の取組を行うとともに、今後を見据えて担い手対策にも注力するなど、浜の活力再生に向けて多岐に渡る取組を行っている。その結果、地域における漁業面のみならず、生活面の課題解決も実現させることにつながった。
これは、この取組に参加するメンバーが目指すべき浜=地域の姿を具体的にイメージし、試行錯誤を繰り返しながら、豊かな漁村の実現に向けた努力の賜物だと思われる。

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