田子の浦漁業協同組合

田子の浦地区水産業再生委員会

魚価向上と6次産業化の推進
「田子の浦しらす」で課題解決へ!

しらすの高付加価値化を中心とした活動により「田子の浦」しらすのブランド化を遂げた静岡県・田子の浦地区水産業再生委員会。さらに他地域との連携によって活動をさらに加速させ、しらすの魚価向上及び6次産業化の成果を出している。
今回は、2018年度浜の活力再生プラン優良事例表彰にて全漁連会長賞を受賞した、当地区の取組をご紹介!

目次

良質なしらすが獲れる田子の浦地区

静岡県富士市田子の浦は、駿河湾の奥に位置する地区だ。駿河湾には、富士山の雪解け水や南アルプスから山の栄養が豊富に注ぎ込むとともに、日本一の深さを誇るその深海からは、湧昇流(海水の上昇運動。海水の湧昇によって深層の栄養塩類が表層付近に運ばれ、海が肥沃化される)に乗って栄養豊かな海水がここに環流することで、しらすのエサであるプランクトンが豊富に存在し、良質なしらすが漁獲される。

その駿河湾を漁場とする当地区は、しらす船曳網漁業が大多数を占めているのが特徴であり、しらすの魚価の安定や向上こそが漁家経営の安定化にとって大きな課題である。

富士山の麓に位置するJF田子の浦

しらすに左右される漁業者

田子の浦の漁業者は、通常2艘で引く網をあえて1艘引きで行い、しらすの魚体を傷つけないように配慮するとともに、漁獲後すぐに船上で通常よりも多量の氷で締め、高鮮度のしらすを水揚げするため、そのしらすには定評がある。また、鮮度が高い「田子の浦しらす」を茹で上げるとしらすが首の辺りで折れ曲がり、『しの字』型でふっくらとした旨味の濃い釜揚げしらすができると評判だ。釜揚げ加工を施したしらすは、その価格が加工前の6倍にもなる。

しかし、水揚げしたしらすを加工処理していない漁業者は、その付加価値分を十分に受け取れない現状、さらには、地元水産加工業者が衰退したことが原因で仲買人の競争力が低下してしまい、しらすの浜値が落ち込むという悪循環に陥っていた。
そのような中、浜プラン策定を機に、しらす自体の魚価向上と6次産業化の推進を課題として挙げ、今回の取組に至った。

しらす漁の様子

生産+加工+販売の6次産業化に向けて

しらすは、鮮魚出荷だと700円/㎏程度だが、ボイル加工すると4,000円/㎏以上で売れる。しかし漁業者自らがボイル加工しても販路を持っていないが故に、一部の漁業者のみの取組であった。
そこで行ったのが、田子の浦漁業協同組合(以下、「JF田子の浦」という。)による6次産業化の取組だ。加工作業場の提供や、JF田子の浦に併設された直売所の活用を通じて、県内外からの訪問客に販売を行っており、漁業者の所得向上や販路拡大に繋がっている。

直売所及び食堂入り口

しらすを中心とした一大観光地の形成

地元での著名なイベントである「田子の浦港しらす祭り」は、開催されるたびに同JFの生しらす丼には長蛇の列ができることから、JF田子の浦は、「田子の浦しらす」に潜在的ニーズがあると考え、海と富士山を眺めながら生しらす丼が食べられる「田子の浦港漁協食堂」をオープンした。
また、一般社団法人富士山観光交流ビューローと連携し、漁協食堂も含めて田子の浦港周辺で「田子の浦しらす」が食べられる店を募り、「田子の浦しらす街道」として首都圏をはじめとし広く宣伝を行った結果、2010年度に約5,000人だった来客数が、2016年度には約73,000人にまで増加した。その多くが生しらす丼目当てで、しらすを中心とした一大観光地として認識されるに至っている。
このほかにも、外国人にも分かる英語表記のルートマップや食堂メニューを作成するなどの工夫により、多数の外国人観光客の訪問を受け、「フード・アクション・ニッポンアワード2015」においてもインバウンド賞を受賞するなど、地域活性化の励みになっている。

生しらす丼、漁協食堂の様子

他地区との連携も

以前からしらすの広い活用方法を模索しており、10年程前からしらす入りコロッケを製造していたJF田子の浦だが、さらなる活動を加速させたいと考えていた。
そこで、2017年には地理的表示(GI)登録を実施。さらに、三島市のJA三島函南との連携を行い、静岡の代表産品である「田子の浦しらす」と同じくGI登録されている「三島馬鈴薯」による、農水産物同士では全国初のGIコラボコロッケ「たみこちゃん」を商品開発した。GI登録後も「田子の浦しらす」の積極的なPRを継続することで、現在も認知度の向上を目指している。

GIコラボコロッケ「たみこちゃん」、GI登録標章

小さなしらすが大きな経済効果をもたらす

行政や関係業者とも連携し強力なPRを行い、また、価値の低かった大き目のしらすを商品開発し付加価値を付ける取組などを行った結果、しらすの魚価は700円/㎏だったものが、1,508円/㎏(2018年度)まで上昇させることができた。
さらに6次産業化の取組みも相まり、数名の漁業者が兼業から専業へ経営体制を転換するといった効果も生まれている。

当委員会の取組は、浜プラン策定時の課題である「魚価向上」や「6次産業化」において、大きな成果をもたらしたと言える。次なる取組として、当委員会は「漁獲物に頼る(物を売る)」思考から「漁獲物を利用する(関連した物やサービスを売る)」思考の取組を行いたい考えだ。継続的な漁業と地域活性化の実現に向け、田子の浦地区は発展し続けている。

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