浜プランの取組地区数
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8
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地区
※2024年3月末時点
浜プランの取組地区数
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地区
※2024年3月末時点
三重外湾漁業協同組合 神前浦事業所錦
大紀町地域水産業再生委員会
目次
大紀町地域水産業再生委員会は、2011年度以降、三重県漁連と連携し品質の高い養殖マダイとして「伊勢まだい」の生産に取り組んでおり、2017年度の生産量は161tと、浜プラン取組初年度(2014年度)39tの約4倍にも達している。
「伊勢まだい」生産の特筆すべきところは、与える餌に三重県特産の海藻類、柑橘類、伊勢茶の粉末を加えていることだ。専用の粉末を出荷前に14日間以上給餌するコストと手間を伴うものの、これにより臭みや脂分が少なくさっぱりとした身質が評価されるようになった。JAL国際線のビジネスクラス機内食にて県産食材として2017年の6月~8月に採用されたり、首都圏等のスーパーからの引き合いが年々増加するなど、認知度が向上するとともに、漁業所得の向上に寄与している。
「伊勢まだい」
加工分野においては、漁業者やその配偶者、地区女性部から組織される「魚々錦会(とときんかい)」により、開発・販売にあたった。キャッチフレーズは、「漁師の味をプロの技術で家庭に届けたい」。女性部を中心に、「伊勢まだい」の加工品や、規格外の魚や低・未利用魚を活用した加工品の開発や販売を行っている。
特に「まだいの塩麹焼き」は、第3回Fish-1グランプリで準グランプリを受賞し、当地区を代表する人気商品だ。また、郷土食をベースにした「べっこうずし」や「ぶりひつまぶし丼」は、東海地方のグルメ雑誌にも多く取り上げられるなど、注目されている。これも、「魚々錦会」のプロ意識によるものであるといえるだろう。
「まだいの塩麹焼き」、「ぶりひつまぶし丼」、直売所「魚々錦」
当地区では、魚食普及のみならず、移動販売車を活用して、買い物難民の懸念すらある中山間地へ水産物を供給することで、周辺地域や高齢者の日常生活の一端を支えている。2014年度は149回/日だった巡回日数を2017年度には271回/日増加させるなどし、販売金額を2014年度の約1.6倍(1,294万円)まで増加させることが出来た。
また、2009年から開催している「錦ぶりまつり」では、定置網で漁獲された新鮮なブリや加工品の販売、郷土料理の提供などを行ったり、「田舎暮らし体験ツアー」においてはアジやサバ等の干物づくり体験プログラムを提供するなど、PRにも力を入れている。これらの取組は当地区で水揚げされる漁獲物の魚食普及や消費拡大に寄与しているほか、地域外からの集客にも貢献している。
移動販売車「魚々錦号」、移動販売の様子、錦ぶりまつりの様子
当地区でも課題となっている担い手の確保。漁業者の高齢化に伴い漁業者数が減少する中、地区外からの新規就業者の確保を目的に、2017年度から「錦漁師塾」を立ち上げ、大型定置網漁業や魚類養殖を対象とした漁業体験を開催した。
また、高齢化する漁業者の安定的な収入確保を目的に、初期投資が少額で特別な技術を必要とせず、かつ1カ月程度の短期間で収穫が可能な海藻「ヒロメ」の養殖を開始している。このヒロメについても、大紀町漁業活性化協議会の水産物直販施設「魚々錦」が主体となり、塩蔵ヒロメを細かく刻んだ麺タイプの加工品を開発するなどして更なる漁業所得の向上に取り組んでいる。
錦漁師塾の様子、ヒロメ養殖の様子
当地区では生産から販売まで各々の取組を行うとともに、今後を見据えて担い手対策にも注力するなど、浜の活力再生に向けて多岐に渡る取組を行っている。その結果、地域における漁業面のみならず、生活面の課題解決も実現させることにつながった。
これは、この取組に参加するメンバーが目指すべき浜=地域の姿を具体的にイメージし、試行錯誤を繰り返しながら、豊かな漁村の実現に向けた努力の賜物だと思われる。
「浜の活力再生プラン」(通称「浜プラン」)は、2014年に始まった、水産業の活性化のための改革の取組です。地域によってさまざまに異なる水産業・漁業を振興させることを目指して、それぞれの漁村や地域(=「浜」)の現状に合わせて考えられた取組計画を「浜プラン」と呼びます。
浜プランは、漁業者や市町村を中心に組織された「地域水産業再生委員会」が、課題・計画・目標を見据えて立案します。
その大目標は、「漁業所得の10%アップ」。収入を向上させる取組、コストを削減する取組など、多種多様な具体的なプランが実践されています。
浜ごとに策定される浜プラン。浜の数だけ課題があり、取組が行われています。大きくは以下のような取組が全国の浜で取組まれています。
<収入向上の取組>
高鮮度出荷・加工品開発、直販・輸出など
<コスト削減の取組>
省エネ機器の導入・協業化・船底清掃の取組実施など
浜プランは、「地域活性化のための処方箋」です。
各地域が抱える課題に対し、漁業者と市町村がタッグを組んで自ら考えた解決策を実践することに、浜プランの本質があります。漁業や水産業の改革によって地域全体を元気にすること、「地域創生」に貢献することが、それぞれの浜プランの役割です。
付加価値向上 | 生産・流通 | 外食・観光 | 消費拡大 | 計 | 参考 各地の浜プラン | |
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北海道地区 | 32 | 16 | 7 | 33 | 北海道 | |
東北地区 | 62 | 31 | 3 | 22 | 青森県、岩手県、宮城県、秋田県 山形県、福島県 | |
関東地区 | 70 | 40 | 16 | 13 | 茨城県、千葉県、東京都、神奈川県 | |
北陸地区 | 24 | 12 | 4 | 19 | 新潟県、富山県、石川県、福井県 | |
東海地区 | 23 | 19 | 13 | 14 | 岐阜県、静岡県、愛知県、三重県 | |
近畿地区 | 30 | 11 | 10 | 33 | 滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県(日本海側)、 兵庫県(瀬戸内海側)、和歌山県 | |
中国地区 | 32 | 10 | 15 | 44 | 鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県 | |
四国地区 | 40 | 53 | 5 | 75 | 徳島県、香川県、愛媛県、高知県 | |
九州・沖縄地区 | 73 | 59 | 41 | 67 | 福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県 | |
計 |