浜プランの取組地区数
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8
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地区
※2024年3月末時点
浜プランの取組地区数
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地区
※2024年3月末時点
鳥取県漁業協同組合、田後漁業協同組合
岩美町地域水産業再生委員会
目次
岩美町は日本海に面する東西およそ15キロメートルのリアス式海岸を有しており、世界ジオパークネットワークに加盟した「山陰海岸ジオパーク」の一部でもある。長年、日本海の荒波と風雪によって浸食された断崖絶壁、洞門、洞窟、奇岩の中に白砂青松の渚が点在する風光明媚な景勝地であり、近年海水浴と併せてシュノーケリングやシーカヤックなどのマリンスポーツなども人気だ。
その岩美町の基幹産業である漁業を支えるのが、「網代(あじろ)漁港」を有する網代地区と「田後(たじり)漁港」を有する田後地区だ。当地区には漁村が4つ(網代、田後、浦富、東)あり、田後漁業協同組合及び鳥取県漁業協同組合(網代港支所、浦富支所、東支所)が所在している(以下、前者を「JF田後」、後者を「JF鳥取」という)。漁業の中核をなすのは沖合底びき網漁業で、主に松葉がにやアカガレイ等を漁獲しており、その水揚量は年間約5,000トン(約30億円)だ。
山陰海岸ジオパークの「千貫松島」、沖合底曳き網漁船、松葉がに
県内の漁協女性部は1960年代に各浜で発足し、最盛期(1990年)は14漁協で組織され、部員数は1,425人だった。その後、漁協女性部は高齢化、部員の減少、漁協合併に伴い、現在は4漁協・支所、約205人にまで減少している。
その中にあってJF鳥取網代港支所の女性部は現在、部員数が82人と県内最多で、活動も盛んな女性部だ。JF田後の女性部も網代港支所女性部に次ぐ規模で活動している。
当JF鳥取網代港支所の女性部は長年にわたり、地元の魚を利用した料理教室等、魚食普及活動に精力的に取り組んできた。その魚食普及活動を活用し、地域の活性化にも取り組んでいる。
岩美地区は、レジャーやアニメの聖地として若年層の観光客が増加している一方、当地区に休憩・飲食スペースが少なく、観光客の滞在時間が短いことが課題となっていた。網代港支所女性部は、この課題を解決し、あわせて高齢化の進む当地区の地域活性化を図るため、網代港支所女性部の既存施設を活用した休憩、飲食スペースの創出に取り組んだ。
地元中学校で網代港支所女性部が魚のさばき方教室を実施、地元のイベント(板ワカメフェス)にて網代港支所女性部が食べ物を販売
JF鳥取 網代港支所の女性部はこれまでの魚食普及活動の経験を活かし、観光客に漁村ならではの魚料理を提供する漁村レストランを開設した。場所は、売上が減少傾向にある販売店舗「女性部の店」の空きスペースだ。
当女性部はレストラン開設に向けて、県内外の魚食レストランの視察、料理研究家との勉強会を実施した後、鳥取県と日本財団の事業を活用し、2017年4月11日に漁村カフェ「あじろカフェなだばた」をオープンした。「なだばた」は、地元特有の言葉で「みんなが集まる場所」という意味だ。
現在は、親がに丼、地魚フライ定食などを提供しており、観光客の来店も増加している。
親がに丼、地魚フライ定食
漁村カフェのほか、当地区では道の駅「きなんせ岩美」に運営会社直営の鮮魚店を整備し、地元産物のよさを積極的にPRする道の駅の特性を活かした地元の魚介類(鮮魚、水産加工品等)を販売する取組を開始した。岩美町産高鮮度魚及びそれを原料にした岩美伝統の水産加工品や新商品を、地域ブランドとして強く発信している。そこで販売される加工品もまた、女性部によるものだ。
この取組はJF田後の女性部が担っており、当地区の伝統的な加工品「するめ糀漬け」等は供給が追い付かないほどだ。また、料理研究家監修のもとで、新たな地魚料理の商品化にも挑戦。その結果、2016年度には「岩美イケイケ魚(フィッシュ)」(ハタハタの南蛮漬け・唐揚げ・甘からだれ等)が完成した。忙しい毎日の家事を担う女性ならではの目線で開発に取り組み鮮度の良い原魚を調理し真空パックで冷凍し、袋をあけて解凍するだけで食べられる手軽さが人気だ。
するめ糀漬、岩美イケイケ魚(フィッシュ)(ハタハタ)
女性部の努力とパワーにより実現した当地区の漁村カフェ及び加工事業だが、「今後は、既存のメニューに加えて新たなメニューづくりにも取組みたい」と、更なるパワーアップを目指している。
地域活性化のためには、イベント開催や直営店オープンによる来客数の増加も効果的であるが、それだけではない。岩美町の浜プランは、女性が生きがいを持って働ける場所づくりが、地域活性化のヒントとなることを示してくれている。
「浜の活力再生プラン」(通称「浜プラン」)は、2014年に始まった、水産業の活性化のための改革の取組です。地域によってさまざまに異なる水産業・漁業を振興させることを目指して、それぞれの漁村や地域(=「浜」)の現状に合わせて考えられた取組計画を「浜プラン」と呼びます。
浜プランは、漁業者や市町村を中心に組織された「地域水産業再生委員会」が、課題・計画・目標を見据えて立案します。
その大目標は、「漁業所得の10%アップ」。収入を向上させる取組、コストを削減する取組など、多種多様な具体的なプランが実践されています。
浜ごとに策定される浜プラン。浜の数だけ課題があり、取組が行われています。大きくは以下のような取組が全国の浜で取組まれています。
<収入向上の取組>
高鮮度出荷・加工品開発、直販・輸出など
<コスト削減の取組>
省エネ機器の導入・協業化・船底清掃の取組実施など
浜プランは、「地域活性化のための処方箋」です。
各地域が抱える課題に対し、漁業者と市町村がタッグを組んで自ら考えた解決策を実践することに、浜プランの本質があります。漁業や水産業の改革によって地域全体を元気にすること、「地域創生」に貢献することが、それぞれの浜プランの役割です。
付加価値向上 | 生産・流通 | 外食・観光 | 消費拡大 | 計 | 参考 各地の浜プラン | |
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北海道地区 | 32 | 16 | 7 | 33 | 北海道 | |
東北地区 | 62 | 31 | 3 | 22 | 青森県、岩手県、宮城県、秋田県 山形県、福島県 | |
関東地区 | 70 | 40 | 16 | 13 | 茨城県、千葉県、東京都、神奈川県 | |
北陸地区 | 24 | 12 | 4 | 19 | 新潟県、富山県、石川県、福井県 | |
東海地区 | 23 | 19 | 13 | 14 | 岐阜県、静岡県、愛知県、三重県 | |
近畿地区 | 30 | 11 | 10 | 33 | 滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県(日本海側)、 兵庫県(瀬戸内海側)、和歌山県 | |
中国地区 | 32 | 10 | 15 | 44 | 鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県 | |
四国地区 | 40 | 53 | 5 | 75 | 徳島県、香川県、愛媛県、高知県 | |
九州・沖縄地区 | 73 | 59 | 41 | 67 | 福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県 | |
計 |