浜プランの取組地区数

5 5 4 地区
※2023年3月末時点

但馬漁業協同組合、浜坂漁業協同組合

兵庫県地域水産業再生委員会 兵庫県但馬沖合底びき網漁業部

2019年度大臣賞受賞!
工夫を凝らした水産物で魅力ある地域づくり!

高鮮度な漁獲物を県内外でPRし、消費や販路を拡大して魚価を向上させるとともに自主的な資源管理を積極的に推進して漁業経営を改善させた。その取組により、2019年度浜の活力再生プラン優良事例表彰において農林水産大臣賞を受賞した当地区の取組をご紹介!

目次

地元経済を支える沖合底びき網漁業

兵庫県の日本海側に位置する但馬地域は切り立った岩や岩壁が並ぶリアス式海岸で、風光明媚な地理特性から都心部からの観光客も多く訪れる。直線距離は43kmと短く、傾斜の緩やかな海底も狭いため、古くから沖合漁業を中心として発展してきた。 但馬地域の沖合底びき網漁業は、古くからいか釣り漁業とともに基幹漁業として地域経済を支えてきたが、現在では、沖合いか釣り漁業の衰退により、当地域の漁獲量のおよそ8割を占める最重要漁業となっている。その漁獲物は主に、ズワイガニ、カレイ類、ハタハタ、エビ類、ホタルイカなどで、特にズワイガニ、ハタハタ、ホタルイカの生産量は全国1位だ。

但馬に押し寄せる変化の波

但馬の漁獲物は大消費地へ生鮮出荷される一方で、地元の水産加工業者により塩干品を中心に多様な加工品が製造されてきた。こうした長きにわたる営みから、但馬地域は水産物の供給地として全国に広く知られ、沖合底びき網漁業は、地域とともに発展してきた。しかし、水産資源の悪化、魚価の低迷、燃油価格の高騰、担い手不足や高齢化など、漁業を取り巻く社会経済状況の大きな変化にさらされ、漁業経営は極めて厳しい状況だ。
そのような中で、課題解決のため、浜プランに取り組んだ。その結果、地域が一体となって、水産物の付加価値向上と浜プランの理念を具体化させ、漁業経営の改善をもたらした。

ハタハタや甘えび・のどぐろの魚醤を開発

漁獲物の付加価値を向上させることに積極的に取り組んでいる。
単価の高い活ガニは冷却海水水槽を活用し、エビ類やホタルイカは船内凍結をすることによって、高鮮度での出荷を実現した。
また、小型のハタハタなどについては、鮮度や味等の品質は遜色ないが魚体が小さいために安価に取り扱われることが多い。これら低利用魚・未利用魚は地元水産加工業者などと協力し、新商品の魚醤を開発した。さらにこの魚醤を用いた味付けのりや干物(旨干し)などの商品化を進め、販売促進することで低利用魚・未利用魚の需要を高めることにも繋がった。

県内外で水産物をPR

県内外での但馬産の水産物のPRも欠かさない。県機船底曳網漁業協会、但馬漁協及び浜坂漁協は、地元観光業界とタイアップした「かすみ松葉がにまつり」、「とよおか津居山港かにまつり」、「浜坂みなとカニ祭り」、「浜坂みなとほたるいか祭り」、「浜坂みなと海鮮まつり」等のPRイベントにおける直接販売等を継続して実施している。
さらに地域内の民宿や旅館、ホテルにおける水産物の利用を推進するとともに、インターネットによる情報発信や直接販売で消費を拡大した。都心部でもポスターを掲示するなどして広く水産物を広くPRした。
また、漁協の青壮年部や女性部は、漁業体験や料理教室を開催し、魚食普及を推進し、メディアにも取り上げられた。こうした活動により県内外で但馬産の水産物の知名度が高まった。

量販店や外食産業のほか、県外にも販売促進

県漁連と連携し、船内凍結エビ類や高鮮度な生ホタルイカの「浜ほたる」をはじめとして、カレイ類、ハタハタ、エビ類等を含めた主要漁獲物を、大消費地の量販店に向け、積極的な販売促進を行った。量販店で開かれた「地魚フェア」では、ゆでたての釜揚げを試食で提供。ボイルでの需要が多い中、生ホタルイカの需要を喚起した。また、認知度向上のため、都市部のレストランや外食産業に対し漁獲物の旬や調理法などの周知、消費拡大を図った。
足元では新型コロナウイルスの影響を大きく受けているが、今後は日本海の魚を全国で食べてもらえる取り組みを進めたいと関係者は意欲的だ。

これからの但馬のために

限りある資源を守り、継続的な漁業を行うためにも資源管理の取組も行っている。資源管理計画を確実に履行するとともにズワイガニの混獲回避漁具の利用や保護区及び禁漁期の設定等自主的な資源管理を積極的に推進し、安定的な水揚げが維持できるよう資源の維持増大を図っている。さらに、国が設置する保護育成礁を近隣県の漁業者と協力して適切に管理するとともに、効果調査等にも積極的に協力することにより、ズワイガニ及びアカガレイの安定的な水揚げができるよう資源の保護と維持増大を図っている。

取組結果

以上のように、但馬の沖合底びき網漁業は、厳しい状況に対し、自主的な資源管理の取組をはじめ、様々な手段による地域や水産物のPRやイベント等での販売促進など様々な取組を行ってきた。その結果、知名度向上による消費・販路拡大に繋がり、漁業経営の改善及び向上が図られ、浜の活性化に繋がった
地域が一体となり、水産物の付加価値向上とPRに努め、所得向上を達成した。これにとどまらず、地域では関係者とも連携してエビのブランド化も進めたいという。但馬地区の今後のさらなる取り組みに注目したい。

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