重茂漁業協同組合

岩手県宮古市重茂地区地域水産業再生委員会

組合員向け情報配信システム導入により生産体制を強化で浜の活力再生プラン優良事例表彰において浜プラン水産庁長官賞を受賞!
天恵戒驕(てんけいかいきょう)の精神で浜を復興!

養殖ワカメのブランド化を進め、組合員向けの情報配信システム活用をした養殖管理体制を構築。東日本大震災からの復興に取り組み、販売力強化との両立により、漁業所得の向上を達成した岩手県宮古市重茂地区。2019年度浜の活力再生プラン優良事例表彰において水産庁長官賞を受賞した同地区の取組をご紹介!

目次

特有のリアス式海岸と沖合の潮流によって発展した漁業

重茂漁業協同組合(以下、重茂漁協)のある宮古市は岩手県東部の沿岸中央に所在。重茂地区は宮古市街地の東岸の重茂半島に位置し、海岸は小さな湾や入り江からなる三陸特有のリアス式海岸だ。重茂半島の自然林が生むミネラル豊富な水が流れ込むその海は、沖合いで親潮と黒潮が交錯する絶好の漁場環境となっている。このことから古くから水産業を基幹産業として発展してきた地域。ワカメ・コンブの養殖漁業、漁船漁業及び、採介藻漁業が営まれている。しかし、2011年3月11日に発生した東日本大震災は当地区の生活、漁業経営を大きく揺るがすこととなった。

重茂に押し寄せた波

東日本大震災の影響は深刻だった。漁業生産は減少、販路は失われた。わかめ、こんぶ養殖施設や漁船、漁港等水産業関連施設が壊滅的な被害を受け、漁業経営は根幹から揺るがされた。天然アワビ稚貝の流出や人工種苗放流事業の中断による漁獲対象資源の減少も見られた。重茂漁協と漁業者の懸命な努力により、生産は徐々に回復した。しかし震災後も、燃油や資材の価格高止まり、福島原発の放射能漏えいによる風評被害、長引く魚価の低迷、磯焼け現象による天然わかめ、天然こんぶ、うに、あわびの生産量の減少など地元の漁業は依然として厳しい状況に置かれた。そして、復興に向けた取組の一つとして浜プランが行われた。

早採り生ワカメの販路を拡大

重茂地区の主要な養殖生産物であるワカメは外洋の激しい海流に揉まれ育てられている。その新芽はワカメの中でも一番おいしいといわれていて寒中に芽吹き、養殖漁業者が1~2月の極寒のなか規格に沿った早採りわかめ「春いちばん®」を一本づつ収穫している。この貴重なワカメの新芽をおいしさと栄養をそのままに、湯通し塩蔵加工したものが「プレミアム春いちばん」だ。シャキシャキした歯ごたえが好評を博している。また、県内や首都圏で市場と消費者にニーズを調査し、規格の検討と品質の均一化を図り、増産に取り組んだ。さらに販路拡大を図った結果、2018年には累計販売額は約1億円を達成し、地域の養殖ワカメのブランド化と漁業者の収入向上に大きく貢献した。

「おもえ漁協ネット」で養殖管理を徹底

2013年度から、組合員向けの情報配信システム「おもえ漁協ネット」を導入し、ワカメ・コンブの養殖漁業にとって重要な情報(海水温や栄養塩など)に加え、適正な養殖管理に必要な情報(種苗の巻込時期、垂下速度など)の配信を行い生産指導を行う体制を構築した。これにより組合員の養殖管理が徹底され、養殖ワカメ・コンブの増産と漁業収入の向上の両立を図った。2018年度の実績では、2015年度と比べ、ワカメが5%、コンブが10%増加するなど、本取組を通じた生産量増大の効果が表れており、組合員の収入向上に繋がった。

2012年から復興商品を毎年発売

2012年から毎年、東日本大震災のあった3月11日に復興商品として新商品を開発する取組を継続して行っている。「あわびまるごと黄金重茂カレー」や「重茂黄金焼うにプレミアムアイス」など地元の食材を使用した商品を発売している。そして今年、2020年は天然ワカメとアカモクを使用した「OMOE CHOCOLATE」を発売した。東日本大震災で被災した宮古市内の洋菓子店、岩手アカモク生産協同組合、そして重茂漁協がコラボして作り上げた、正に復興商品にふさわしい商品だ。本取組では、震災後、三陸産の水産物に対して風評被害があった中、地元水産物の情報発信を継続することで、風評被害の払拭や重茂ブランドの確立に貢献している。

産学官連携による省エネ化

漁船減速航行や、繋留中の機関停止、積載物の削減、船底やプロペラの清掃などの燃油消費量の削減策に加え、養殖干しこんぶ製造の際に用いる乾燥機の灯油削減にも取り組んだ。2015年度から国立研究開発法人水産研究・教育機構水産工学研究所、岩手大学、岩手県水産技術センター等の関係機関と連携して乾燥工程の省エネ化に向けた実証実験を実施した。2017年度には、試験結果をもとに作成したマニュアル(冊子)全養殖業者121名に配布、普及し、乾燥工程の省エネ化の推進を図った。その結果、養殖業者の省エネ対策が推進され、灯油の削減が図られた。2018年度の実績では、燃油価格高騰の影響があるなかで73,440円/人の削減効果があったと試算されている。

天恵戒驕の精神を今後も

天恵戒驕(てんけいかいきょう)とは重茂漁協初代組合長の西舘善平氏が生み出した言葉である。天の恵みに感謝し、驕ることを戒め不慮に備えよ、という意味だ。その後、組合員、職員に対し天然の資源は有限であり、これを無計画に乱獲せず、常に新たな資源を補いながら自然と共存共栄を図ることが一番大切であると教え伝え、この教訓は、今でも重茂漁協に受け継がれている。この教訓のもと、森林や河川を守ることや、合成洗剤追放運動などが行われている。震災後も減少したアワビ等の資源回復のため、稚貝放流等を実施し、水揚げ量回復に尽力した。海中林造成などの漁場造成・給餌対策など、水産物の持続的な利用と所得向上の両立に向けて、今後も漁協と漁業者が一丸となり積極的に取り組んでいく重茂漁協から目を離せない。

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