浜プランの取組地区数

5 8 8 地区
※2024年3月末時点

九十九島漁業協同組合

北九十九島地域水産業再生委員会

異業種連携の推進
漁業者・漁協・市・県が一丸となり所得向上へ!

カタクチイワシの品質向上により煮干しの単価が改善。また、養殖トラフグのブランド強化では、異業種と連携のうえ市内外でPRを強化。試験販売を重ね、認知度を向上させた。

目次

日本有数の煮干し生産とトラフグ養殖

北九十九島地区地域水産業再生委員会(以降当地区)が主な漁場とする海域は、多くの島々と複雑な海岸線により形成された九十九島海域の北部に位置し、アジ・サバ・イワシ等を対象としたまき網漁業、タイ・イサキを対象とした一本釣漁業、その他ごち網、刺網等の漁船漁業が幅広く行われている。特にまき網により漁獲されるカタクチイワシを原料とした煮干し加工業は、日本有数の生産量を誇っている。
また、島影等の静穏域では、トラフグ・マダイ・ハマチを中心とした魚類養殖が盛んに営まれ、特にトラフグは煮干し同様、日本有数の生産量を誇っている。養殖トラフグは、「九十九島とらふぐ」のブランド名で知られ、出荷前の養殖トラフグに与える餌に特産品である「西海みかん」を早摘みしたものを混ぜることで、トラフグの身が引き締まると言われている。引き締まった身質が魅力だ。

遠のく魚群・消費者・従事者

世界規模の海水温の上昇が影響したと思われる藻場の減少は、根付資源の減少を引き起こすのみではなく、煮干し原料のカタクチイワシの魚群の形成位置にも変化をもたらし、漁場までの距離が遠くなった。このため燃油使用量が増加し、燃油価格の高止まりと相まって燃料費が膨らみ、漁家経営を圧迫している状態にあった。これは、まき網漁業のみならず他の漁業においても同様に問題となっている。
あわせて、消費者の魚離れによる魚価安も長期化し、水産資源の減少が叫ばれる中で漁獲量の増加も期待できない状況であり、漁業収入を増加させることが課題となっている。さらには、沿岸漁業での漁業従事者の高齢化と減少が顕著となっているとともに、まき網などの雇用型漁業における従事者確保も課題となっている。

氷の使用量を増やし鮮度保持

 全国有数の煮干しの生産地である当地区では、高品質な煮干しを生産するため、漁業者は原料の漁獲後から水揚げまでの氷の使用量を増やし、鮮度保持に努めた。その結果、2018年度の煮干しの平均単価は、2013年度に比べておよそ1.3倍以上となった。
中型まき網漁業は、近年カタクチイワシの漁場が遠い沖合で形成されるようになり、燃油使用量の増加が経営を圧迫していた。このため、船底清掃や減速航行により燃油コストの削減を図った。

異業種と連携し食べる文化を育成

「九十九島とらふぐ」のブランド強化に向け、飲料メーカーの「キリン絆プロジェクト」を活用した。「市民がとらふぐを食べる文化の育成」をキーワードに、プロジェクトメンバーの協力を受け、情報発信、商品開発、飲食連携などを積極的に検討。役割分担として、キリン株式会社は九十九島とらふぐの販売展開のために広報面の支援や飲食店の紹介などを企画面でリード、漁協は生産現場の情報提供や要望に応じた加工出荷に対応し、佐世保市はこの企画に連携・協力することとした。この体制のもと、2016年から「出荷式」(市長トップセールス)や、「九十九島とらふぐキャンペーン」を開始した。
その後、同プロジェクトには地域の特産である世知原茶、赤マテ貝も加わり、新たな体制へと発展。活動がさらに拡大された。

試験販売で認知度向上

「九十九島とらふぐ」の試食販売やPRを、ハウステンボス、横浜レンガ倉庫、都内の長崎県アンテナショップ「日本橋長崎館」の他、都内、県内外のホテル、飲食店などで行った。この地道な取組が新聞やテレビで報道され、県内外でも「九十九島とらふぐ」の認知度が向上した。結果として当初(2012年)に43万円であった販売実績が、2018年度には約700万円となった。
取引先は市内のホテル・飲食店を中心に14店舗となり、大手リゾートホテルグループとの取引も始まった。また、平均単価も浜プランを策定した2014年以降、大きく改善している。

漁業者の高い意識が成果をもたらす

地区の重要な産業である煮干し及び養殖トラフグの生産について、漁業者、漁協、市、県が協力し、異業種とも連携しながら振興に取り組んできた。県内の食品販売・飲食業などへの波及効果も大きく、市のふるさと納税の返礼品としても活用されており、地域への貢献度は高い。
漁業者の所得向上への高い意識が、生産現場が既存の出荷・流通体制にとらわれない異業種との連携などの積極的な経営改善の取組を推し進め、認知度の向上、取引の拡大の成果をもたらしたといえる。
足元ではコロナ禍の影響を受けつつ、第2期浜プランにおいても、「九十九島とらふぐ」の活用に注力している。国の「農林水産物等特産品販売事業」を活用し、九十九島とらふぐの料理を提供する飲食店を紹介するとともにブランド発信を強化している。関係者が一丸となった取組による漁業者。さらなる所得向上に期待したい。

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