浜プランの取組地区数

5 5 4 地区
※2023年3月末時点

三宅島漁業協同組合

三宅島地区地域水産業再生委員会

漁業者減少に歯止めを
地域一丸で就業者対策

 2000年に発生した雄山噴火災害により、漁業者の高齢化と後継者不足が深刻化した。この課題に対し地域が一丸となり新規就業者を確保育成するための総合的な仕組みを作り、漁村の活性化に結びつけた。
 今回は2020年度浜の活力再生プラン優良事例表彰にて水産庁長官賞を受賞した当地区の取組をご紹介!

目次

東京都の離島・三宅島

東京都の南約180kmに位置する三宅島。東京の山手線の内側とほぼ同じ大きさの島で、1年間を通じ温暖な気候で知られている。当島は火山活動が活発で、その活動で創られたダイナミックな地形が島内のいたるとこにあり富士箱根伊豆国立公園に指定されている。また、黒潮が直接あたる三宅島の海域は魚の宝庫でマグロやキンメダイなどの漁業の他、釣りやダイビングのポイントとして観光客に知られている。
2000年には島の中央部に位置する雄島が噴火し全島民の避難が余儀なくされたが、現在は、漁業や観光業をはじめとした産業が再開されている。

噴火の影響は漁業にも

2000年に発生した噴火の影響はもちろん漁業にもあった。全島民は4年半にわたる避難生活を余儀なくされる。帰島した漁業者のうち、漁業を再開する者は少なく、就業者の年齢も70歳以上の割合が高く、新規漁業者の確保が課題であった。
また、噴火により発生した火山泥流の影響を受け漁場の荒廃が進み、噴火前の漁業生産の下支えとなっていたテングサやトサカノリ等海藻類やイセエビの水揚げが激減した。そのため、一斉帰島後の2005年以降の漁業生産はひき縄、底魚一本釣り、マグロ浮きはえ縄などの漁船漁業が中心となり、全体の水揚げの9割以上を占めている。年間の水揚げ金額は増加傾向にあり、その一因としてキンメダイの魚価高騰とそれに伴う漁獲増加が挙げられる。今後もキンメダイ等の底魚一本釣り漁業への依存が高まっていくことが予想されることから、持続可能な漁業活動のために適切な資源管理の実施が必要とされている。

独立までの総合的な仕組みづくり

浜プランの中核に漁業就業者の増大と定着を据え、漁協、漁業者、村及び都の関係者で「後継者対策実行委員会」を立ち上げた。同委員会で知恵を出し合い、就業から独立までの総合的な仕組みを作った。取組当初から、就業希望者とのマッチングや短期研修の開催、長期研修期間中のサポート、独立時の漁船取得経費を軽減する漁船リース事業の導入などを実施した。その結果、現在までに4名の新規就業者が独立し、地域全体の水揚げ量の底支えする存在となっている。さらに、漁村地域の若返りや活性化にもつながっているなど、新規就業者は地域の水産業を発展させる上で欠かせないものとなっており、取組には地域内の全ての漁業者が協力し、活動を継続させていくことに賛同している。

低・未利用魚を買い上げて魚食普及

漁獲物の中に含まれる低・未利用魚の加工にも取り組んでいる。水揚規格外の魚を買い上げて利用することにより、漁業者の収入につながるようになった。加工品開発は始まったばかりで知名度もまだ低いが、今後は、新商品開発や改良を進めるとともに商談会への出展や、パンフレットの作成等によるPRをさらに進め、取扱量を増やすことでより一層の所得向上を目指している。
また、時期的に魚価が低迷する魚を、島内の「いきいきお魚センター」で干物などに加工して販売。また、切り身などを学校給食の食材としても供給したり地元の小学校に出前授業を行うなど、漁家収入の維持向上に寄与するとともに魚食普及を推進した。

資源保護で持続的に漁業を

資源管理の取組も行われている。主要な漁業の一つであり新規就業者も行っているキンメダイ漁において、三宅島の周りのキンメダイ資源管理措置を他の漁場よりも漁具の本数や操業時間を厳しく制限し、過剰な漁獲にならないよう資源管理にも取り組んでいる。トコブシについても禁漁期間・区域等を設けるなど、計画的な操業と管理を漁協と採介藻部会(漁業者グループ)が行っている。

新たな就業者の増大と他地域への波及を期待

後継者対策について、漁協を主体に漁業者、村、都が協議を重ね、地域が一体となって取り組んだことが、人材の確保と育成の成果に表れた。新規就業者の漁業活動の実績が、着業に希望を持つ者への呼び水となり、新たな就業者の増大と定着につながることが期待される。浜の活力を向上させるこの取組は、先進事例としてすでに新島や母島などの東京都の他の島しょ地区へと波及している。類似する漁業地域の課題解決にも貢献する、模範的な取組といえる。
就業者支援と低・未利用魚の加工・販売を始めとするこれまでの取組の更なる深化・発展そして浜の活性化に期待したい。

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