浜プランの取組地区数

5 8 5 地区

野田村漁業協同組合

野田地区地域水産業再生委員会

東日本大震災の被害から復興へ
漁場の特性活かしブランド育成

震災の津波による壊滅的な被害から、漁業生産を順調に回復させる。養殖ホタテガイを始めとする漁獲物のブランド化に団結して取り組み、地域の水産業の発展につなげた。

目次

外海ではホタテ、山では山ぶどうが育つ

岩手県北部に位置し、太平洋に面している野田村。野田湾に面している北側には十府ヶ浦に代表される砂浜が広がり、南側にはリアス式海岸が続いている。外洋に向けて大きく開けている野田湾では、漁業が盛んで波の強い外海では「荒海ホタテ」などの養殖や定置、採介藻などの漁業が営まれている。農業も盛んで山ぶどうは生産量日本一の岩手県において県内トップクラスの生産量だ。また、古くから鉄の生産や製塩が盛んで、現在でも海水を数日間煮込み作る「のだ塩」は地域の特産で、お土産としてはもちろん、ソフトクリームをはじめとする飲食店のメニューとしても使われている。

野田村に押し寄せた波

2011年3月11日の東日本大震災では津波などによって漁船や水産関連施設は甚大な被害を受け、養殖の主力であるホタテガイの生産量は震災前と比べ約4割にまで落ち込んだ。漁業者は復旧に向け尽力してきたが、復旧のための金銭的な負担に加え、燃料や資材などの価格高止まりや漁獲物の減少、担い手不足など当地区を取り巻く環境はより一層厳しさを増していた。こうした状況の中、ホタテガイの生産量回復、カキやホヤを対象にした新たな養殖の事業化、水産物の付加価値向上などを中心とした浜プランに取り組んだ。

GI認証を取得した「荒海ホタテ」

野田村の高品質な養殖物を「荒海ブランド」として知名度向上を図るため、地域ブランドの確立に取り組んでいる。
波当たりの強い養殖漁場でホタテが自由に泳げるようなカゴで生産することにより実現した、貝柱が肉厚で味が濃厚なホタテガイを2014年から「荒海ホタテ」と命名し販売を開始した。2017年には「岩手野田村荒海ホタテ」の名称で2017年11月に岩手県の水産物では初となる地理的表示(GI)保護制度に登録され、地域ブランドを保護しつつ更なる販売強化を行っている。その結果、販売単価は約1.7倍までの上昇を実現し、漁業者の収益向上に大きく寄与した。

「荒海団」を組織し水産物を地域内外にPR

野田村漁業協同組合、漁業者、株式会社のだむら、野田村で「荒海団」を組織し、野田村産のホタテガイなどの質の高い水産資源のPRにより、水産物の販路拡大・付加価値向上に向けた認知度とブランド力の向上に取り組んでいる。
野田村漁協が主催する「野田ホタテまつり」に加え、県内の地ビール会社が主催するイベントや、盛岡市で毎週土曜日に開催される路上買物市「よ市」への出店により「荒海ホタテ」の販売促進・ファン獲得に取り組んでいる。また、年に2,3回首都圏などで飲食店や消費者と交流し「荒海ホタテ」のファンを獲得。消費者を招いた産地見学会も企画し、産地と消費者の新たな交流を生むなど、地域内外の関係者との協働によるブランディングが進められている。
荒海団の活動は日本を飛び出し宇宙にまで進出した。東日本大震災から10年にあたる2021年3月11日に東北復興の姿と支援への感謝の気持ちを国際宇宙ステーション(ISS)から全世界へ発信する試みの一環で、荒海団のステッカーが活用された。宇宙から戻ってきたステッカーは地域活性化や震災の記憶と教訓の伝承に活用される予定だ。

震災を乗り越え魅力ある漁村づくりを進める

インターネットやメディアを活用した情報発信など水産物の質の高さをPRする体制が構築されており、ホタテに続いて、ワカメを「荒海ワカメ」として販売することで知名度向上の取り組んでいる。さらにカキやホヤの養殖事業化・荒海シリーズ化も期待される。「荒海団」の活動は各種マスコミ等にも取り上げられ、水産物のブランド化に留まらず、野田村全体のイメージアップにも大きく貢献している。
東日本大震災の影響で減少した漁業生産の回復などの課題に対して地域内外の協働により、高品質な養殖物の認知度向上を図り、目標に掲げた漁業所得の増加を達成したことは魅力ある漁村づくりと水産業の発展において、顕著な功績をあげたといえよう。小さな浜からの大きな挑戦に今後も注目したい。

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