浜プランの取組地区数

5 8 8 地区
※2024年3月末時点

美津島町漁業協同組合

対馬地区地域水産業再生委員会

持続的な漁業のために
イスズミの駆除・活用から藻場の復活へ

磯焼けが深刻化するなか、原因の一つであるイスズミを効果的に駆除、そして食用として活用する方法を確立。持続的な藻場保全活動を推進した取組が評価され、2020年浜の活力再生プラン優良事例表彰において農林中金理事長賞を受賞した対馬地区地域水産業再生委員会の取組をご紹介!

目次

異文化交流の島・対馬

対馬は長崎県に属し九州と朝鮮半島の間に存在する島で、その地理的な特徴から古くからユーラシア大陸と日本の文化的・経済的な交流の役割を果たしてきたと言われている。近年においても、韓国からの観光客が多く来ていたことで知られており、島内には随所にハングルが併記された標識や案内を見ることができる。海岸線はリアス式海岸が多く、各地に小さな湾がみられ漁港として活用されている場所も多い。
漁業においては、対馬暖流がもたらす豊かな漁場に恵まれ、漁業が島内の基幹産業である。当地区は対馬中部の東沿岸及び西沿岸地域に点在する漁業集落を拠点とし、主に東沿岸ではイカ釣漁業、西沿岸ではマグロ養殖業が営まれている。

減りつつある藻場

藻場は多くの水産生物の生活を支え、産卵や稚魚の生育の場を提供するだけでなく、海水の浄化など大きな役割を果している。しかし全国的に藻場は減少し、磯焼けが進行している。
対馬でも近年、磯焼けが急速に広がったため大型の海藻類が残っているのは島の北東部のみとなり、ヒジキやカジメなどの海藻類の漁獲が大きく減っている。気候変動による海水温の上昇に伴い、南方系の魚であり藻類を主食とするイスズミが増加したことが、その原因の一つと考えられる。
藻場の復活は全漁業種類に共通する地域の課題であり、豊かな水産資源を維持・回復する要であることから漁業者、漁協、市、県が連携し藻場の回復に取り組んでいる。

イスズミの効率的な漁獲・加工利用を促進

イスズミを効率的に漁獲する方法が検討された結果、住処となっているテトラポットや岩礁帯を刺し網で囲み、その内側で潜水者が銛を使って突刺し、驚いて逃げるイスズミを刺し網にかける、一度で大量に漁獲できる手法を確立した。
さらに独特な磯臭さのためにこれまで加工が進んでこなかったイスズミの臭みの除去とおいしい料理の開発が進められた。リーダーシップを発揮する漁業者が主体となりイスズミを使ったメンチカツが開発され、2019年には「第7回Fish-1グランプリ」の国産魚ファストフィッシュグランプリ部門においてグランプリに輝いた。

Fish-1グランプリ受賞効果で販売量増加!

「Fish-1グランプリ」の受賞によってイスズミの加工品は一般に認知されるようになった。考案した料理を講習会などで紹介したことによりイスズミのすり身の販売量と金額が増加した。さらに2020年9月以降、対馬市内の小中学校の給食にイスズミのすり身や切り身が使われるようになった。これまで漁獲されてもあまり活用されていなかったイスズミを加工・利用することにより漁業者の安定収入に貢献することが期待される。

地域一丸の取組をこれからも

小中学校向けの水産教室等に各集落から漁業者が講師として参加し、藻場保全対策やイスズミ料理等を紹介するなど、地域の児童・生徒や父兄に藻場回復の必要性を発信。漁業関係者に限らず一般島民にも徐々に藻場や海洋環境への理解が深まり、藻場保全の取組が全島的な取組へと発展している。
当地区で確立されたイスズミの効果的な駆除・利用の方法は磯焼けに悩む全国の地域で活用できる可能性のある技術だ。今後も植食性魚類の効率的な駆除と食用利用の取組の継続・発展、他地域への波及に期待したい。
2019年度から始まった当地区の第2期浜プランでは今回紹介した藻場の保護・育成に加え、養殖マグロやヤリイカの地域ブランド化などにも取り組んでいる。当地区の取組から目が離せない。

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