浜プランの取組地区数
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地区
※2024年3月末時点
浜プランの取組地区数
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山形県漁業協同組合
山形県広域水産業再生委員会
目次
さくらんぼ、コシヒカリ、山形牛に米沢牛。農業や酪農、畜産のイメージが強い山形県。日本海に面する海岸線は、わずか135kmしかなく、海岸を保有する都道府県の中では、鳥取県の130kmに次いで2番目に短い。
こうした理由からか、山形県と海とが結びつくイメージは、一般的にも少ないようにも感じられる。 山形県は大きく4つの地域に分けられ、内陸部には県庁所在地山形市のある村山地域を中心に、その北側にある最上(もがみ)地域、南に位置する置賜(おきたま)地域を配し、そして日本海に面する庄内地域からなっている。海岸をもつ庄内地域は、県土の25%ほどの面積しかなく、ほとんどが山地に囲まれた内陸地域で構成されているのが特徴だ。
内陸の3地域はそれぞれが盆地であり、山に区切られるように位置している。そのため山形県の各地域は、異なる食文化をもって発展してきたという特色がある。
出典:山形県ホームページ
山形県漁協の悩みの種は、獲られた魚の出荷先だった。庄内で獲られた魚は、40%が庄内地域内で消費されるが、50%が近隣の県外都市部へ、10%が内陸の3地域へ出荷されている。
県外出荷は、物流の大半を占める重要な出荷先であるものの、「庄内浜産」という産地名の訴求力が弱く、一部の高級魚を除き値段がつきにくい。一方、内陸へとなると、山形市公設地方卸売市場で取引されるのは、外国産のメバチマグロや、近隣県のカツオやホッケなど、量と規格が揃ったものが主流であり、少量多品種を特徴とする庄内の漁業にとっては、魚価が下がりやすい状況にあった。
この状況を打破するためには、「山形県内での知名度」と、「豊富な魚種」を活かせる策が求められていた。
出典:浜の活力再生プラン ブロック推進会議 事例報告資料(2017年8月21日開催)
山形県漁協が策定した「浜の活力再生 広域プラン(広域浜プラン)」では、当時10%の物流しかなかった内陸部への流通ルートを開拓し、県内消費を増加させることに焦点が当てられた。
というのも、庄内地域から県庁所在地の山形市へは、車で2時間程度。少し足を伸ばせば行ける距離だったため、内陸に販路を広げることには抵抗がなかった。
また、消費者への直販ルートを開拓できれば、漁協が直接買い付けることによって中間コストを削減できる。さらに流通させるものは、今まで浜でしか食べられてこなかった魚や、またそれらを惣菜に加工し付加価値をつけることで漁業所得の向上にも結び付くことが期待された。
出典:浜の活力再生プラン ブロック推進会議 事例報告資料(2017年8月21日開催)
内陸部へのルート開拓プランは、「山形県 水産物直売トライアル事業」としてスタートした。商品の流れは次のような構想で企画された。
漁業者が水揚げした魚を山形県漁協が荷受、漁協が自ら買参権をもち、市場にて買付ける。その後、漁協の水産加工場に集荷、鮮魚と加工された総菜を新たに山形市内に立ち上げる漁協直営の産直店に運搬・販売するというものだ。また、販売は一般消費者に対してだけではなく、庄内浜産の魚貝類を応援する飲食店メンバーで構成される「やまがた庄内浜の魚応援店」への販売も目指された。
平成28年3月、流通ルートの核となる直営店「庄内海丸(しょうないうみまる)」が、山形市城西町にあるスーパー「コープしろにし」内にスペースを構える形で、営業を開始した。オープンショーケースが2本、販売員は2名の交代制という小さな店舗だが、ルート開拓のための重要拠点だ。
出典:浜の活力再生プラン ブロック推進会議 事例報告資料(2017年8月21日開催)
内地への販売拠点となる庄内海丸は、「庄内浜産の魚」を効果的にPRするため、他店舗と差別化するいくつかのコンセプトをもっている。それが次の4つだ。
①「庄内浜産」の商品のみを販売する
②1匹まるまるの魚、「丸魚」を扱う
③刺身や三枚おろしなど、お客様の要望に応じた「調理サービス」を提供する
④庄内のみで食べられていた貝類「亀の手」など、市場に出回らない珍しい魚貝類を販売
出典:浜の活力再生プラン ブロック推進会議 事例報告資料(2017年8月21日開催)・庄内観光物産館 ふるさと本舗だより
また販売方法も、単に来店した人との売り買いで終わるのではなく、専属販売員を置き、お客様・販売スタッフ・生産者の3者の顔が見える関係性を作るため、徹底した「庄内流販売」が意識された。
① 「庄内浜魚の旬」や「庄内浜でのおいしい食べ方」などの情報を紹介しながら販売する
② 庄内浜で水揚げされてから販売されるまでの「魚が持つストーリー」を説明する
③ 試食をお勧めし、お客様に納得いただいてから販売する
こうした丁寧な販売を行うことで、庄内地域のみで食べられるような、お客様にとっては見たことも食べたこともない魚貝類ですらも買ってもらえるようになった。
出典:浜の活力再生プラン ブロック推進会議 事例報告資料(2017年8月21日開催)
産直店以外での販売ルートの開拓には、移動販売車を活用することとした。移動先は主に2つ。まずJAの直売施設だ。そしてもう一つが、「やまがた庄内浜の魚応援店」と呼ばれる、積極的に庄内浜産の魚を取り扱い、PRに協力している内陸部の飲食店やホテルだ。
応援店は募集によって集められ、現在125店舗がメンバーになっている。これら飲食店は、庄内浜の魚貝類をPRしてくれることに加え、浜では思いつかないような調理法や料理を提供してくれ、庄内浜産の魚貝類に新たな価値が生むことに貢献している。
例えば、山形市七日町に店舗を構える「ワインバー&キッチン 食堂メルカド」では、庄内食材のガサエビ(トゲザコエビ)と亀の手を使ったパエリアや、珍魚であるハナタラシ(ガンコ)を使用したアクアパッツァなど、オリジナリティのある料理を提供している。
出典:浜の活力再生プラン ブロック推進会議 事例報告資料(2017年8月21日開催)・ワインバー&キッチン 食堂メルカド
産直店 庄内海丸を核にしたルート開拓のプラン「山形県 水産物直売トライアル事業」は、当初の計画に対して4倍の利益を上げる成果をもたらした。だが得られた成果は、数値だけに留まらない。内外から多くの反響が寄せられた。 漁業者からは、「せっかく水揚げしても今まで出荷されなかった未利用魚が、おいしく食べてもらえるようになった。」との喜びの声が出た。
また、お客様からも「庄内の新鮮な魚が内陸でも気軽に買えるようになって良かった。店員さんがおいしい食べ方を教えてくれるから魚料理を食べる機会が増えた。」といった嬉しい評価も聞こえてくるようになった。
提供:やまがたコミュニティ新聞
しかし、山形県漁業協同組合 指導課 佐藤氏は、取組に評価を示しながらも、まだ課題が残されていると語る。
その最大の課題が、品揃えの安定化だ。庄内地区の漁業は漁船漁業に頼っているため、時化が起きると操業ができず、店頭に魚が並ばない状態になる。ひどい場合は、臨時休業を余儀なくされる。特に冬場の日本海は、1か月の内5日操業できれば良いほどで、安定して商品を確保するための対策が急務だと言える。
もう一つの課題が、次なる店舗展開に向けた人材育成と確保だ。特に事業を先導する漁協職員については、こうした店舗営業の経験やノウハウを身につけておかなければならない。また、漁協として漁業者を支え、消費者のニーズを次の企画や商品へと結び付けていく体制作りも不可欠だ。
こうした課題がありながらも、庄内海丸を起点にしたルート開拓の広域浜プランには、好循環が生まれ始めている。今まで知られていなった庄内の魚に付加価値をつけて内陸へ出荷し、値段を付けて販売できるようになった。流通量がさらに増えれば、流通コストが下がり、漁業所得にも貢献できる。
トライアル事業としてスタートした山形県漁協の広域浜プランは、次の取組に向けて動き始めている。
(執筆:2017年9月11日)
「浜の活力再生プラン」(通称「浜プラン」)は、2014年に始まった、水産業の活性化のための改革の取組です。地域によってさまざまに異なる水産業・漁業を振興させることを目指して、それぞれの漁村や地域(=「浜」)の現状に合わせて考えられた取組計画を「浜プラン」と呼びます。
浜プランは、漁業者や市町村を中心に組織された「地域水産業再生委員会」が、課題・計画・目標を見据えて立案します。
その大目標は、「漁業所得の10%アップ」。収入を向上させる取組、コストを削減する取組など、多種多様な具体的なプランが実践されています。
浜ごとに策定される浜プラン。浜の数だけ課題があり、取組が行われています。大きくは以下のような取組が全国の浜で取組まれています。
<収入向上の取組>
高鮮度出荷・加工品開発、直販・輸出など
<コスト削減の取組>
省エネ機器の導入・協業化・船底清掃の取組実施など
浜プランは、「地域活性化のための処方箋」です。
各地域が抱える課題に対し、漁業者と市町村がタッグを組んで自ら考えた解決策を実践することに、浜プランの本質があります。漁業や水産業の改革によって地域全体を元気にすること、「地域創生」に貢献することが、それぞれの浜プランの役割です。
付加価値向上 | 生産・流通 | 外食・観光 | 消費拡大 | 計 | 参考 各地の浜プラン | |
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北海道地区 | 32 | 16 | 7 | 33 | 北海道 | |
東北地区 | 62 | 31 | 3 | 22 | 青森県、岩手県、宮城県、秋田県 山形県、福島県 | |
関東地区 | 70 | 40 | 16 | 13 | 茨城県、千葉県、東京都、神奈川県 | |
北陸地区 | 24 | 12 | 4 | 19 | 新潟県、富山県、石川県、福井県 | |
東海地区 | 23 | 19 | 13 | 14 | 岐阜県、静岡県、愛知県、三重県 | |
近畿地区 | 30 | 11 | 10 | 33 | 滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県(日本海側)、 兵庫県(瀬戸内海側)、和歌山県 | |
中国地区 | 32 | 10 | 15 | 44 | 鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県 | |
四国地区 | 40 | 53 | 5 | 75 | 徳島県、香川県、愛媛県、高知県 | |
九州・沖縄地区 | 73 | 59 | 41 | 67 | 福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県 | |
計 |