浜プランの取組地区数
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地区
※2024年3月末時点
浜プランの取組地区数
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山口県漁業協同組合
下関外海地区地域水産業再生委員会
目次
平成18年、山口県内の83の漁協が合併する形で発足したのが、県域漁協である山口県漁業協同組合だ。日本海と瀬戸内海に囲まれる地形をもつ山口県では、獲れる魚種や漁法、漁業規模、経営規模が地域によって大きく異なる。そのため、本店が県全体を管理しながらも、県内を10地域に区分けし、それぞれを管轄する統括支店が各支店の管理を行う、支店-統括支店-本店の3段階のガバナンス制を敷いている。
2014年に「浜の活力再生プラン(浜プラン)」が開始された際には、この10の地域でプランが立案された。
出典:浜の活力再生プラン ブロック推進会議 事例報告資料(2017年7月18日開催)
その一つ下関外海地区は、山口県漁協本店に加え、8つの支店が含まれる地域だ。九州への玄関口でもある下関市は、響灘(ひびきなだ)海域に面し、蓋井島(ふたおいじま)や六連島(むつれじま)といった複数の島を含む岩礁域が多いことが特徴で、関門海峡の潮流の好影響もあることから、古くから優良な漁場として知られてきた。
下関外海地区の漁業では、採介藻漁業や小型機船底びき網漁業のほか、一本釣り漁業、海藻養殖など様々な漁業が営まれている。魚種としては、アワビ、サザエ、ウニなどの磯根資源や、マアジ、サワラ、マダイなどが主流だ。特に、一本釣り漁業によるサワラやマアジの水揚げは堅調さを保っている。
冬場にはワカメ養殖業が主漁業となり安定的な生産がある一方、近年国産価格が高値安定しているヒジキ養殖業への拡大展開も進んでいる。
蓋井島の漁港 (出典:住まいる下関)
恵まれた環境に、豊富な魚種、様々な漁法が営まれる下関外海地区の漁業は、一見すると堅調にも見えるが、ある問題を抱えていた。
国内の多くの漁業者が頭を抱える魚価の低迷や燃油の高騰は、ここ下関外海地区でも同様であった。漁業所得を圧迫するこうした問題に対して、一般的に行われやすい解決策のひとつは、漁獲量を増やすことだ。しかし、この地区の漁業者のほとんどは小規模漁業を営んでいて、漁獲量には限界があり、現状以上の量を獲ることが極めて難しい状況にある。
減収分を補完するための「量の確保」ができないとすれば、「売り方の改善」をすることで魚価を向上させるしかない。下関外海地区の漁業者が立てた浜プランは、こうした背景から立案されたものだった。
出典:浜の活力再生プラン ブロック推進会議 事例報告資料(2017年7月18日開催)
取り組まれたのが、有志の中堅・若手漁業者が、毎週土曜日に開催している朝市についての取組だった。
朝市の取組が始まったのは、浜プランが開始された1年前の平成25年。
もともと下関外海地区には系統の市場がなく、漁業者は下関市唐戸市市場、山口県下関漁港市場、北九州市公設市場といった民間市場へ出荷販売をしていたが、小規模経営が多い漁業者にとってみれば、数量がまとまらない魚種は市場で値段が付きにくいというジレンマを抱えていた。
こうした分析を踏まえて検討されたのが、漁業者自らが値段を付けて販売できる場、朝市の開催だ。必要な施設や資材の整備には県の補助事業を活用し、市街地からのアクセスが良い下関駅間近にある、漁協本店に隣接する活魚センターを利用することで集客効果を狙った。
朝市に参加するのは、六連島、彦島、伊崎の3支店と漁協本店。時化などで商品が揃わない場合は、他県の商品を手当てすることで、開催以来ほぼ中止されることなく継続開催されていた。
出典:浜の活力再生プラン ブロック推進会議 事例報告資料(2017年7月18日開催)
開始当初から好評を得た朝市だったが、新たな問題が発生する。
それは、開催回数が増えるにつれ、集客も増加する一方、商品数量が間に合わない事態に陥ってしまったのだ。ひどいときは開始10分で完売になってしまい、消費者の期待に応えられない上、せっかくの販売機会を無駄にすることが続いてしまっていた。朝市の参加メンバーの多くは底曳網漁業者であり、特に時化が多い冬場には、商品が集まらないことも要因となっていた。
そこで手を打ち始めたことが、朝市に参加する支店を増やすための交渉だ。交渉を経て、蓋井島支店の参加が決まり、一定の商品ラインアップの確保は解決され始めたものの、時化や不漁時の品揃え状況には変わりがなく、抜本的な対策が求められていた。
出典:浜の活力再生プラン ブロック推進会議 事例報告資料(2017年7月18日開催)
時化の影響を受けずに販売数量を確保するために考えられたのが、共同で定置網を行う漁業グループの結成だ。
山口県漁協 伊崎支店の有志者たちは、港からきわめて近い場所で実施可能であり、時化の影響を受けにくい小型定置網漁業に目を付ける。小型定置網漁業は、獲れる魚種も豊富であり、多様な消費者の期待に応えられるという点でも最適な漁法であった。
さらに、このグループの何よりのポイントは、通常操業とは別の取組とし、漁獲物を朝市を主に販売することで所得向上を目指そうとしたところだ。
出典:浜の活力再生プラン ブロック推進会議 事例報告資料(2017年7月18日開催)
定置網の取組開始により、商品数・取扱魚種はともに増加し、また多少の時化では欠品することを回避できるようになった。
その結果、朝市の賑わいと活気が増し、来客数にも貢献することとなった。 そして何より、アジやイトヨリダイ、アマダイ、サゴシ、タコなど、ほとんどの魚種の販売単価が向上し、民間市場で取引するよりも高い値段で販売できるようになったことが、欠かすことのできない成果だ。
だが、山口県漁協 総務指導部 部長 渡辺氏は、この浜プランの真の成果は、集客や単価以外の部分にあると考えている。「(集客・魚価の向上)それ自体よりも、この取組により支店間や女性部との連携が強化される環境が出来上がったこと、また朝市に訪れる一般のお客様が、漁業者を身近に感じてくれるようになったこと」、こうした内外での意識の変化が、何よりの報酬であったと語る。
出典:浜の活力再生プラン ブロック推進会議 事例報告資料(2017年7月18日開催)
山口県漁協 下関外海地区の浜プランをまとめてみると、5つのステップで実践されたことがわかる。
① 目下にある課題を把握(魚価の低迷)
② 置かれた環境を分析(小規模漁業者が多数を占める)
③ 適切な解決策を企画(「量の確保」ではなく「売り方(=朝市)の改善」)
④ 状況の再確認と、新たな課題の発見(朝市での数の不足)
⑤ 抜本的な解決策への集中的な取組(朝市への鮮魚供給を主目的とした漁業グループの結成)
「朝市」という取組テーマだけを目にすると簡単にも思えるかもしれないが、それは大きな間違いだ。この取組が効果を発揮したのは、下関外海地区のプランが、取組ありきで進められたのではなく、課題に対して適切な策を選択的・集中的に行ったからこそだ。
渡辺氏は、「獲ってから売ることを考えるのではない。必要だから生産量を増やす、という意識」と強調する。
出典:浜の活力再生プラン ブロック推進会議 事例報告資料(2017年7月18日開催)
そして、下関外海の漁業者たちは、次の一歩を踏み出し始めている。それが、地元大手量販店への直接販売だ。すでに量販店側との協議や、売り場担当者との勉強会を重ね、平成29年2月にから直販ルートでの販売を始めている。
そこで重視したのも、やはり意識の面だ。「イベントごと」としてではなく、「商売としての取組」であることが重視され、この取組にはルールが設けられている。まず、①納入価格は生産者自身が決定し、自ら量販店と商談を行うこと、②量販店側は納入数の全てを買い取るという点だ。
渡辺氏は、「一般には、漁業者は量販店主導の価格形成に従うしかないと言われる。だが、水揚状況や天候、相場など、相手を納得させらる情報を常に取得・提示できれば、自分たちで価格を作っていくことは可能」と言い、そうした意識が高まっていると語る。
これら浜プランを通じて、山口県漁協の組合員や生産者など、そこに携わる人々の意識が変化していることは確かだ。
(執筆日:2017年9月11日)
「浜の活力再生プラン」(通称「浜プラン」)は、2014年に始まった、水産業の活性化のための改革の取組です。地域によってさまざまに異なる水産業・漁業を振興させることを目指して、それぞれの漁村や地域(=「浜」)の現状に合わせて考えられた取組計画を「浜プラン」と呼びます。
浜プランは、漁業者や市町村を中心に組織された「地域水産業再生委員会」が、課題・計画・目標を見据えて立案します。
その大目標は、「漁業所得の10%アップ」。収入を向上させる取組、コストを削減する取組など、多種多様な具体的なプランが実践されています。
浜ごとに策定される浜プラン。浜の数だけ課題があり、取組が行われています。大きくは以下のような取組が全国の浜で取組まれています。
<収入向上の取組>
高鮮度出荷・加工品開発、直販・輸出など
<コスト削減の取組>
省エネ機器の導入・協業化・船底清掃の取組実施など
浜プランは、「地域活性化のための処方箋」です。
各地域が抱える課題に対し、漁業者と市町村がタッグを組んで自ら考えた解決策を実践することに、浜プランの本質があります。漁業や水産業の改革によって地域全体を元気にすること、「地域創生」に貢献することが、それぞれの浜プランの役割です。
付加価値向上 | 生産・流通 | 外食・観光 | 消費拡大 | 計 | 参考 各地の浜プラン | |
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北海道地区 | 32 | 16 | 7 | 33 | 北海道 | |
東北地区 | 62 | 31 | 3 | 22 | 青森県、岩手県、宮城県、秋田県 山形県、福島県 | |
関東地区 | 70 | 40 | 16 | 13 | 茨城県、千葉県、東京都、神奈川県 | |
北陸地区 | 24 | 12 | 4 | 19 | 新潟県、富山県、石川県、福井県 | |
東海地区 | 23 | 19 | 13 | 14 | 岐阜県、静岡県、愛知県、三重県 | |
近畿地区 | 30 | 11 | 10 | 33 | 滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県(日本海側)、 兵庫県(瀬戸内海側)、和歌山県 | |
中国地区 | 32 | 10 | 15 | 44 | 鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県 | |
四国地区 | 40 | 53 | 5 | 75 | 徳島県、香川県、愛媛県、高知県 | |
九州・沖縄地区 | 73 | 59 | 41 | 67 | 福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県 | |
計 |