浜プランの取組地区数
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8
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地区
※2024年3月末時点
浜プランの取組地区数
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地区
※2024年3月末時点
釧路市漁業協同組合
釧路市地域水産業再生委員会
目次
北海道の東側、太平洋に面する釧路港は、古くはサケ・マスや沖合底曳網漁業などの基地としての役割を担っていた。およそ25年間にわたる水揚日本一を支えたのはイワシ漁で、平成初頭までの釧路漁業を支えてきた。だが、環境変化などにより漁獲量が縮減、現在はサンマ漁の基地として機能してきている。
しかし近年、ニュースでも知られる通り、サンマは港から遠方の海域に漁場を形成するようになり、水揚は縮小する傾向にある。その一方で、一度減少したイワシの資源量が回復の兆しが見えてきている。
時代とともに主要魚種の変遷を繰り返してきた釧路漁業の歴史は、「魚種交替」の歴史とも言えるだろう。
浜の活力再生プラン ブロック推進会議 事例報告資料(2018年2月14日開催)
組合員56名を抱える釧路市漁業協同組合では、シシャモこぎ網、カニ篭、エビこぎ網、刺網など様々な魚種・漁法で漁業が営まれている。日本有数の基地市場として知られる釧路港だが、浜の漁業者に目を向ければ、他地区と同様、資源環境の変化や漁業者の高齢化に悩まされていた。
「魚種交替」への対応を求められてきた釧路市漁業協同組合で必要とされているのは、とりまく環境の影響を受けにくい安定的な収入源だ。漁業者を主体にスタートした釧路市の浜プランの中で、特に注力されたのが刺網漁業者によるカレイの価値向上の取組みだった。
浜の活力再生プラン ブロック推進会議 事例報告資料(2018年2月14日開催)
釧路市漁業協同組合 指導部の坂氏によれば、当地の刺網によるカレイ類の漁は、どちらかというと質よりも量を重視する傾向があったそうだ。だが一方で、漁業者の中には資源への心配もあり、「このやり方を続けていてもいいのか」「魚の価値を高めることを優先した方がいいのではないか」という意識も同時に持つ者もいたという。
そこで、資源を守りながら持続的に漁業を営むため、刺網漁業者たちは「鮮度にこだわった出荷方法」により、漁獲物の価値を高め、少ない水揚でも安定した収入源をつくることに挑み始めた。
だが付加価値のつく、活魚出荷はすでに地元消費地向けに実施しており、魚価は頭打ち状態だった。より大消費地に向けて、新たなやり方での試みが求められた。
浜の活力再生プラン ブロック推進会議 事例報告資料(2018年2月14日開催)
まずは、釧路水産試験場の加工部を講師に招き、えら切り脱血、脊髄締め、神経締めの手法を学び、それぞれの長所・短所を習得することから始められた。
次に市場視察と市場担当者へのヒアリングを実施し、札幌圏での需要や流通に関する情報を収集。その結果、活締めした商品が各地に存在していることがわかり、コンセプトを明確にして差別化することが不可欠であることに気付かされた。また、安定供給が必要なことや、漁獲者がわかるトレーサービリティが求められていることも価値ある情報になることがわかった。
事前の情報収集としての講習会と市場調査を踏まえ、差別化のためのコンセプトを決定。徹底的な鮮度へのこだわりは、次の2点によって実現していくことになった。
①船上締めであること
②「エラ切り脱血」・「脊髄締め」を併用すること
本格出荷に入る前に、まずは市場評価を確認するために札幌に試験出荷を実施。入念な事前活動が功を奏し、鮮度に対する市場からの評価は期待通り高いものだった。
浜の活力再生プラン ブロック推進会議 事例報告資料(2018年2月14日開催)
試験出荷の結果は良好であったものの、釧路のサメガレイがブランドとして価値を持つために改めて認識した点もあった。それは、差別化と収益安定化を実現するブランド魚であるためには、「鮮度以外に、消費者へ与える印象がブランド力になる」ということだった。
そこでサメガレイのブランド名を設定することとし、「活締めを極める」という漁業者の意気込みから『極』(きわみ)と命名した。また梱包される発泡スチロールのパッケージも検討し、市場調査の際に他地区では見られなかった黒を基調にしたデザインを採用。さらに、カレイに専用のタグを付けることで、トレーサビリティと品質の証とした。
浜の活力再生プラン ブロック推進会議 事例報告資料(2018年2月14日開催)
『極』の鮮度へのこだわりは船上から始まる。漁船には6基以上の水槽タンクとブロワ装置(水槽への酸素補給装置)が設置され、冬の極寒による凍結を防ぐためにデッキごとテント囲いが施されている。夏場には冷海水装置を使用して、高温による鮮度落ちを防ぐ。それぞれの設備は、デッキでの作業効率を考慮して配置する徹底ぶりだ。
タンクには沖合のきれいな海水が張られ、サメガレイは漁獲後すぐにこのタンクに入れられる。専用のハサミを使用して「エラ切り」を施し、タンクで30分かけて血を抜いていく。十分に脱血したら、身の締りを増す「延髄切り」を行う。マキリ(漁業用包丁)で延髄を切り、さらに余分な血を抜き去る。エラ付近にはまだ血が残っているため、最後の仕上げに洗い流し、船上での活締めが完了だ。
浜の活力再生プラン ブロック推進会議 事例報告資料(2018年2月14日開催)
港に戻ると、梱包・出荷準備に入る。専用の発泡スチロールに窒素氷を入れ、保冷のためグリーンパーチを敷いてからサメガレイが箱に入れられる。魚体には船名ステッカーを付け、エラ付近にタグを取り付ける。サメガレイの肌は固くザラザラしているため、発泡スチロールの削りクズが混入する恐れがあることから、透明フィルム被せて梱包している。
本格出荷後も、こうした丁寧な努力が実り、市場からの評価は上々だ。「血抜きがしっかりされているため、赤身が消え、白身に透明感がある」「特有の臭みがなく、身も上質」「刺身商材としての需要もあることから、消費量の増加が見込まれる」など、『極』の品質の高さが評価されている。
この評価は魚価にも跳ね返り、地元市場に出す通常のものに比べ、約2倍の価格を付けるまでに至っている。
浜の活力再生プラン ブロック推進会議 事例報告資料(2018年2月14日開催)
今後を考えれば、もちろん課題はある。『極』の出荷に取組むのは4隻の船だけであり、時化(しけ)など漁模様にもより、安定供給への難しさを乗り越えなければならない。また、船上の活締め作業は、魚の価値を高める一方で、作業時間と手間の負担が大きい。船長自らが行うことも多く、乗組員の安定的な確保も必要だ。
だが釧路市漁業協同組合は、全国に向けた釧路産ブランドの確立を目指して、次に向けた検討を始めている。サメガレイ以外で収入源となりえる魚種や、未利用資源の活用を模索している。また、人材不足解消のための協業化や、活締め技術の若手への継承も検討中だ。
『極』によってもたらされた意識変化が、次の動きの活力となり、新たなブランド魚の誕生へとつながり始めている。
「浜の活力再生プラン」(通称「浜プラン」)は、2014年に始まった、水産業の活性化のための改革の取組です。地域によってさまざまに異なる水産業・漁業を振興させることを目指して、それぞれの漁村や地域(=「浜」)の現状に合わせて考えられた取組計画を「浜プラン」と呼びます。
浜プランは、漁業者や市町村を中心に組織された「地域水産業再生委員会」が、課題・計画・目標を見据えて立案します。
その大目標は、「漁業所得の10%アップ」。収入を向上させる取組、コストを削減する取組など、多種多様な具体的なプランが実践されています。
浜ごとに策定される浜プラン。浜の数だけ課題があり、取組が行われています。大きくは以下のような取組が全国の浜で取組まれています。
<収入向上の取組>
高鮮度出荷・加工品開発、直販・輸出など
<コスト削減の取組>
省エネ機器の導入・協業化・船底清掃の取組実施など
浜プランは、「地域活性化のための処方箋」です。
各地域が抱える課題に対し、漁業者と市町村がタッグを組んで自ら考えた解決策を実践することに、浜プランの本質があります。漁業や水産業の改革によって地域全体を元気にすること、「地域創生」に貢献することが、それぞれの浜プランの役割です。
付加価値向上 | 生産・流通 | 外食・観光 | 消費拡大 | 計 | 参考 各地の浜プラン | |
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北海道地区 | 32 | 16 | 7 | 33 | 北海道 | |
東北地区 | 62 | 31 | 3 | 22 | 青森県、岩手県、宮城県、秋田県 山形県、福島県 | |
関東地区 | 70 | 40 | 16 | 13 | 茨城県、千葉県、東京都、神奈川県 | |
北陸地区 | 24 | 12 | 4 | 19 | 新潟県、富山県、石川県、福井県 | |
東海地区 | 23 | 19 | 13 | 14 | 岐阜県、静岡県、愛知県、三重県 | |
近畿地区 | 30 | 11 | 10 | 33 | 滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県(日本海側)、 兵庫県(瀬戸内海側)、和歌山県 | |
中国地区 | 32 | 10 | 15 | 44 | 鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県 | |
四国地区 | 40 | 53 | 5 | 75 | 徳島県、香川県、愛媛県、高知県 | |
九州・沖縄地区 | 73 | 59 | 41 | 67 | 福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県 | |
計 |