浜プランの取組地区数

5 5 4 地区
※2023年3月末時点

鳥取県漁業協同組合境港支所

境港市地域水産業再生委員会

情熱とユーモアで魚離れを食い止める

漁業者が中心となって行う食育・魚食普及活動

総合的に優れた取組を行っている地域水産業委員会に授与される「全漁連会長賞」を受賞した2地区のうち、鳥取県の境港市地域水産業再生委員会の取組をご紹介。
漁業者を中心に官民が一体となって食育・魚食普及活動を推進し、大きな成果を上げた。その地域の水産業の振興に不可欠な取組は、漁業者の熱い想いから始まった。

目次

日本屈指の漁港と妖怪のまち

鳥取県境港市にある境漁港は、特定第三種漁港に指定されており、日本海沖合漁業の中核基地として全国的な水産物の生産・流通拠点を担ってきた。他にも「ゲゲゲの鬼太郎」での作者で知られる水木しげるの出身地としても知られ、境港駅から水木しげる記念館まで続く「水木しげるロード」は妖怪の銅像が出迎えてくれる人気観光スポットだ。そんな境漁港では、まき網漁業、かにかご漁業、沖合底びき網漁業などが盛んで、四季を通じて多種多様な水産物が水揚げされる。特に夏のクロマグロや禁漁期を除く9月から翌年6月までの10ケ月間漁業が行われるベニズワイガニは、日本有数の水揚げを誇る。境港市では、漁獲量の増加が見込みづらい状況のなかで浜の活性化に向け、長年にわたり官民が一体となって様々な施策に取り組んできた。

水産物を関係者全体でPR

境港市では、ベニズワイガニをPRする「境港カニ水揚げ日本一PR実行委員会」、クロマグロをPRする「境港天然本マグロPR推進協議会」、沿岸漁業をPRする「さかいみなと中野港漁村市実行委員会」が長年活動しており、各者が活動の一環として継続して魚食普及活動を行ってきた。各団体には、漁業者をはじめ、市場関係者から飲食店まで、水産物に関連する一連の関係者が協働して活動している。また、保育園、幼稚園では、年間行事として魚食普及が組み込まれている。また、境港市長自ら地元観光協会のYouTubeチャンネルに出演し、ベニズワイガニの食べ方をレクチャーするなど官民をあげた特色のある活動を行っている。

保育園・幼稚園での魚食普及

カニ集会は「境港カニ水揚げ日本一PR実行委員会」が主催し、ベニズワイガニの勉強会を市内8つの保育
園や幼稚園で実施。カニ芝居(紙芝居)、茹でガニの実演、食べ方の動画視聴、試食などを行った。「境
港天然本マグロPR推進協議会」が主催するマグロ集会、境港市が主催する銀ざけ集会も同様の活動を市内の保育園や幼稚園で実施した。また、境港市が主催し「さかいみなと中野港漁村市実行委員会」の協力を得て開いた「中野港沿岸漁師と園児の交流会」では、小型底びき網漁業者が園児の見学時間に合わせて漁獲物を水揚げし、魚の仕分けなどを市内6つの保育園や幼稚園の園児たちに体験してもらった。そして、市職員が紙芝居のような形で漁の方法を園児たちに説明し、水揚げの様子を動画で見てもらうなどの活動を行った。

未来の若者の魚離れを食い止めるという使命

幼少期から魚食や漁業に慣れ親しむことは、将来の若者の魚離れを食い止め、漁業への就業に興味を持ってもらうための一助となる。園児を対象とした魚食普及は、漁業者、市場関係者、行政などがしっかり連携を取り、境港市長自らが現場で講師を務めるなど、今後も地域が一体となって取り組んでいく考えだ。こうした地道な取組が奏功し、参加した園児からは漁師になりたいという声もあるという。漁業者の想いから始まった、わかりやすくて効果的な食育・魚食普及は、情熱とアイデア次第で実行することが可能で、他の地域にとり大いに参考となる事例である。今後も意欲的な取り組みに期待したい。

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