浜プランの取組地区数

5 5 4 地区
※2023年3月末時点

五島漁業協同組合

五島地区地域水産業再生委員会

離島のハンディキャップを乗り越えて漁業所得向上!

定置網漁業で様々な工夫を凝らし安定した水揚を確保

九州・長崎から西に100kmの海上に浮かぶ大小129の島々からなる五島列島。離島という地理的なハンディキャップを乗り越え、五島地区の漁獲量の約4割を占める定置網漁業で、様々な工夫を凝らし総合的な取り組みで、漁業所得向上に取り組んだ五島地区地域水産業再生委員会をご紹介!

目次

離島のハンディキャップを乗り越えるために

長崎県の五島地区は、東シナ海に浮かぶ五島列島周辺の豊富な漁場に恵まれている。多くの魚介類が生息するこの海域において、豊かな自然環境を利用した多種多様な漁業が営まれている。
水産業は、地域経済を支える重要な産業となっているが、漁獲量の減少や離島という地理的なハンディキャップによる流通のコスト高に加えて、近年の燃油高騰により、漁業経営は厳しい状態が続いている。
こうした課題を克服するため、漁業者の負担軽減や鮮度保持・衛生管理による付加価値の向上などの取組を開始した。

「五島〆の匠」認定制度創設で他地区と差別化

同地区では、漁獲物の「脱血神経締め冷却」に取り組み、継続した鮮度保持処理を実施し、技術の改良を図った。特に、活け締めや神経締めなどで高い技術を持つ者を認定する「五島〆の匠」認定制度を創設。取扱基準にもとづいて処理した鮮魚を「五島〆」として差別化し、高付加価値化と販路拡大に取り組むことで、漁業所得の向上を図った。
また、漁獲物の蓄養体制や計画的な出荷体制の確立、活魚出荷による付加価値の向上、蓄養・活魚艙の利用推進等により、漁業者の収益を向上させた。
このほか、新たな収入源の確保のため、養殖種苗(カンパチ幼魚)の活用、地元の養殖業者や県漁連と連携した出荷、加工業者と協力した商品の開発・販売を行い、魚価と所得を向上させることに成功した。

人手不足の解消や漁具の強化で収益が安定

漁船の近代化による安全性の向上と省力化、周年雇用と社会保険加入による労働環境改善を図り、既存の雇用者の労働意欲が上がった。さらに、新たな雇用者が入りやすい環境整備の結果、若者の従事者が増え、地域の雇用創出に大きく貢献した。
その結果、人手不足の解消によって、鮮度保持処理や未利用魚の活用などを十分に行えるようになり、収益の安定につながった。
さらに、漁網やロープの強化だけでなく、台風や異常潮流にも耐えるように改良した定置網の導入、季節によって構造の違う漁網の使い分け等により、台風等の被害を最小限に抑え、漁具の修繕や撤去などにかかる時間やコストを削減することができ、台風や異常潮流に強い操業体制を確立した。

漁業者主体で持続可能な漁業を確かなものに

資源管理の活動では、網の目合いを拡大し、幼稚魚の保護やクロマグロを対象とした休漁、漁具の開放による再放流を行う。漁場や対象魚種に応じて網の目合いや休漁時期を変えるなど、漁業者が自ら考えた資源管理を継続し、水産資源の回復を図ることで安定した生産につなげた。
雇用条件の改善や漁獲物の鮮度保持などは、他の地区でも応用が可能である。近年の物価高騰で経営が厳しいなか、離島のハンディキャップを乗り越えて持続可能な漁業を確かなものとした。島の漁業を守ろうとする強い意志が取組を推し進め、大きな成果をもたらした。
このように、離島というハンディキャップを乗り越え、漁業所得向上に寄与した五島地区地域水産業再生委員会の取組に今後も注目したい。

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