浜プランの取組地区数

5 5 4 地区
※2023年3月末時点

鳥取県漁業協同組合 福部・賀露・酒津・浜村・夏泊・青谷・泊支所

鳥取県中部地域水産業再生委員会

担い手の確保と育成に注力
伝統の海女文化を守り、ブランド化を推進

高齢化や後継者不足が深刻化している中で、浜プランでは高付加価値水産物の安定供給、生産地や生産者の顔が見える地域ブランドの創出、新規就業者の受入態勢の再整備などに取り組んだ。その取組の中で、鳥取県中部地域で活躍する海女さんたちの、ブランド化による所得向上の取組をご紹介!

目次

高齢化や後継者不足で漁業者が減少

鳥取県の中部地域は、日本海の外海に面し、東部に広がる鳥取砂丘をはじめとする大小の砂浜と、それを区切るように岩礁域が点在しており、自然豊かだ。
同地域には、沖合底びき網の基地である鳥取港を筆頭に7つの漁業地区があり、鳥取港を除く6地区では専ら沿岸漁業が営まれている。漁業者数は、沖合底びき網漁業では安定しているが、沿岸漁業では、高齢化と後継者不足により減少の一途をたどっており、漁業や漁村を維持するための漁業収益や就業者の確保などが急務であった。

海女文化の再始動

鳥取県中部地域の夏泊地区では、400年以上の伝統を誇る海女漁が、夏泊地区で受け継がれてきた。しかし、高齢化や後継者不足により、2013年にその歴史を閉じた。そこでJFでは、2014年度より県の漁業就業者研修制度を利用し、福部地区で2名の海女を育成。研修生として経験を積み、独立した。2名の海女は、JF鳥取の福部支所の正組合員となり、現在生産活動に従事している。その活躍は、担い手育成の重要な先例となっており、海女の活動を知り、潜り漁業をしたいという1名がその後、新たに加わって就業するなど、海女漁の活動に広がりが見られる。

リブランディングで高付加価値化!

新規に就業した2名の海女は、2016年に「岩戸港海女組」という水産振興グループを立ち上げる。そして、ボンベ潜水により、素潜り漁が困難な深場で漁獲した、大型のイワガキを新たにブランド化した。
同県で採取されたイワガキは「夏輝なつき)」ブランドとして販売されており、同地域の鳥取砂丘沖で漁獲される超大型(蓋長16cm以上)で良型のものを「砂丘の誉(ほまれ)」と命名し、2020年度から出荷して価格も上昇した。「砂丘の誉」の基準をクリアできるサイズのイワガキは、水深18~21mの深部を漁場とするため、ボンベを使った潜水漁でしか漁獲ができない。
潜水士資格をもつ漁師数名しか採ることができないため数も限られ、「砂丘の誉」ブランドを名乗れるのは1日わずか10~20個程度と、大変希少価値の高い、まさにプレミアムな天然岩牡蠣となっている。

加工品開発と情報発信で販路拡大

地元の漁業関係者らと協力し、港内でのワカメ養殖、海藻加工品の製造などを行い、漁業収入を向上させた。クロモやアカモクの塩蔵加工、若いうちに収穫した養殖ワカメの「ヤングリーフわかめ」、海女の製法を受け継いだ「天然絞りわかめ」といった商品を生産し、レシピや食べ方の説明を紹介するなど情報発信して販路の拡大に努めた。また、パッケージのデザインも誰でも手に取りやすいポップなものに仕上げた

絶たれていた伝統文化の復活へ

このほかにも、同地域の漁業者は、墨袋を処理したイカ類の出荷拡大、イワガキの陸上保管方法の普及、キジハタやズワイガニのブランド化など、多くの取組を進めて付加価値の向上やブランドの発展に力を注いだ。
新規に就業した海女により、絶たれていた伝統が復活し、雇用の創出や漁業所得の向上に貢献した。浜の活力を担う一員となり、新しい鳥取の海女文化の構築に向けて、さらなる活動の展開が望まれる。関係者の情熱と行動により多くの成果を上げた、大いに参考となる事例である。
今後も鳥取県中部地域水産業再生委員会の取組に注目したい。

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