浜プランの取組地区数

5 8 8 地区
※2024年3月末時点

山形県漁業協同組合

山形県水産業再生委員会(底曳き部会)

独自の厳格な基準で資源管理
「庄内北前ガニ」ブランドの確立

山形県では、地理的条件から操業日数が限られ、漁獲物の安定供給が難しく、価格形成も買い手有利となっていた。そうした状況において、ズワイガニの資源管理を推進してブランド「庄内北前ガニ」を確立し、単価向上につなげ、地域に明るい希望をもたらして活性化に寄与した山形県水産業再生委員会(底曳き部会)の取組をご紹介!

目次

漁業の成長産業化に向けて

山形県の沿岸は、約135キロメートルの海岸線で構成され、35の集落と15の漁港が点在している。同県では、小型底曳き網漁業を主体とする底曳き網とごち網漁業が、水揚げ生産額の3分の1を占める基幹漁業となっている。底曳き網とごち網漁業は、冬季の風浪が厳しいことから、年間の操業日数は少ない年で80日程度に限られ、漁獲物も少量多品種であることから水産物の安定供給が難しく、買い手有利の価格形成となっていた。同県水産業再生委員会の底曳き部会では、漁業の成長産業化が求められる地域の現状をふまえ、漁業収入の向上に向けて、ズワイガニのブランド化や資源管理の推進、蓄養施設の整備による安定出荷体制の構築、県内陸地域にオープンした漁協直営店「庄内海丸」を活用した水産物の消費拡大など幅広い活動に取り組んだ。

出荷までのマニュアル策定

山形県のズワイガニはPRが十分に行われてこなかったため、地元での認知度は低く、県外でもあまり知られていない状況にあった。また、北陸や山陰などの主要産地と比べ、徹底した出荷基準による選別作業が実施されておらず、出荷されるカニの品質にばらつきがあり、市場での評価を下げる一因となっていた。2018年に漁協、沿岸2市1町、県、水産関係組織などで構成する「庄内浜ブランド創出協議会」で「ズワイガニ部会」を発足し、先進地から講師を招いた選別方法の学習会、先進地の視察、漁獲から出荷までのマニュアル策定などに取り組んだ。2019年度には名称を「庄内北前ガニ」とし、出荷基準を活ガニで重さが700グラム以上と定めたほか、重さや甲羅の幅等をさらに厳格に規定した「特選」ブランドを設けた。

独自の厳しい基準でのズワイガニの資源管理

ズワイガニの資源管理では、目合のサイズ制限や曳網回数を1日当たり3回までに制限する独自の厳しい基準を定め、着実に実施することにより持続可能な漁業の実現を図った。取組の結果として、ズワイガニの資源量の安定と単価の向上をもたらし、漁業者の所得向上に大きく寄与した。今後の展開として、さらなる資源管理(保護礁の整備)の推進による安定的な漁獲体制の構築と蓄養施設の整備による安定出荷体制の構築を検討している。底曳き部会が行う資源管理の取組は、汎用性が高く、全国のズワイガニ資源の維持や増大に応用できる事例だ。

官民が連携し、一体となって成果を実らせた活動

ズワイガニの資源管理とブランド化は、漁業者自らが学び努力を継続して「庄内北前ガニ」の価値を向上させるという浜プランの理念を体現した取組であり、地域の水産業を発展させるうえで欠かせないものだ。また、県内における庄内北前ガニの消費拡大の取組は、地元の飲食店や宿泊施設の活性化に寄与しており、地域への貢献度も大きい。ズワイガニのブランド化における先進地域である北陸地方の実例を参考にしながら官民が連携し、一体となって成果を実らせた活動は、他の地区にとって大いに参考となる事例だ。

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