浜プランの取組地区数※2024年3月末時点
5 8 8 地区 ※2024年3月末時点
串間市漁業協同組合
串間市西地区地域水産業再生委員会
目次
宮崎県の最南端に位置する志布志湾に面した串間市西地区は、豊かな海洋環境を背景に海面養殖、小型底曳網、機船船曳網、曳縄一本釣りをはじめとする多種多様な沿岸漁業が営まれている。このうち、ブリやカンパチを中心とした海面養殖が、地区全体の生産額の9割以上を占めている。近年、沿岸漁業では漁獲量の減少や燃油高騰、養殖業では配合餌料の高騰の影響によって採算性の確保が厳しい状況となっている。そこで、同地区では漁村の活力を取り戻し、漁家経営の安定を図るために浜プランを策定し、漁業コストの削減を図るとともに、養殖規模の拡大や漁協直売所を活用した加工による付加価値の向上などに取り組んだ。
同地区の基幹産業である海面養殖業は、海外への出荷が順調に伸びていたものの、現状以上に生産量を増やすことができない状況にあった。そこで、2018年に隣接海域の区画漁業権を新たに取得し、沖合養殖システムや自動給餌システムの導入の検討を開始した。2020年度には、国の補助事業である「もうかる漁業創設支援事業」を活用して大型浮沈式生け簀9基を導入し、また、大型給餌船や大型網洗浄ロボット、斃死回収装置の開発などを通して省人・省力化による経費削減に努め、輸出拡大に向けた生産性の高い養殖システムへの移行を実現させた。この結果、ブリの生産性は大幅に向上し輸出相手国を20カ国にまで伸ばすことができたことから、漁業所得は当初の計画値を大きく上回った。
この他にも、漁協直売所や道の駅を活用した販路開拓による魚価・収入向上対策、より高い収益が見込める漁業との複合経営を推進する操業体制の多角化、磯焼け海域でのウニ除去や母藻を投入する水産資源の維持増大などに取り組んだ。また、漁業コスト削減のため、減速航行や船底清掃による燃油消費量の節減を図るとともに、非操業時の漁具保管の徹底や日々のメンテナンスによる漁具使用年数の延長に努めた。養殖ブリはご当地グルメとして数店舗の地元飲食店で取り扱われており、周辺地域の活性化にも繋がっている。同地区の取組は、海面養殖業における新たな可能性を切り開いた好事例といえ、今後の発展が期待される。
「浜の活力再生プラン」(通称「浜プラン」)は、2014年に始まった、水産業の活性化のための改革の取組です。地域によってさまざまに異なる水産業・漁業を振興させることを目指して、それぞれの漁村や地域(=「浜」)の現状に合わせて考えられた取組計画を「浜プラン」と呼びます。
浜プランは、漁業者や市町村を中心に組織された「地域水産業再生委員会」が、課題・計画・目標を見据えて立案します。
その大目標は、「漁業所得の10%アップ」。収入を向上させる取組、コストを削減する取組など、多種多様な具体的なプランが実践されています。
浜ごとに策定される浜プラン。浜の数だけ課題があり、取組が行われています。大きくは以下のような取組が全国の浜で取組まれています。
<収入向上の取組>
高鮮度出荷・加工品開発、直販・輸出など
<コスト削減の取組>
省エネ機器の導入・協業化・船底清掃の取組実施など
浜プランは、「地域活性化のための処方箋」です。
各地域が抱える課題に対し、漁業者と市町村がタッグを組んで自ら考えた解決策を実践することに、浜プランの本質があります。漁業や水産業の改革によって地域全体を元気にすること、「地域創生」に貢献することが、それぞれの浜プランの役割です。
付加価値向上 | 生産・流通 | 外食・観光 | 消費拡大 | 計 | 参考 各地の浜プラン | |
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北海道地区 | 32 | 16 | 7 | 33 | 北海道 | |
東北地区 | 62 | 31 | 3 | 22 | 青森県、岩手県、宮城県、秋田県 山形県、福島県 | |
関東地区 | 70 | 40 | 16 | 13 | 茨城県、千葉県、東京都、神奈川県 | |
北陸地区 | 24 | 12 | 4 | 19 | 新潟県、富山県、石川県、福井県 | |
東海地区 | 23 | 19 | 13 | 14 | 岐阜県、静岡県、愛知県、三重県 | |
近畿地区 | 30 | 11 | 10 | 33 | 滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県(日本海側)、 兵庫県(瀬戸内海側)、和歌山県 | |
中国地区 | 32 | 10 | 15 | 44 | 鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県 | |
四国地区 | 40 | 53 | 5 | 75 | 徳島県、香川県、愛媛県、高知県 | |
九州・沖縄地区 | 73 | 59 | 41 | 67 | 福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県 | |
計 |