串間市漁業協同組合

串間市西地区地域水産業再生委員会

大型浮沈式生け簀でブリを一括管理
沖合養殖システムを導入し、輸出拡大を実現

宮崎県の串間市西地区は、ブリやカンパチを中心とした海面養殖業が地区全体の生産額の9割以上を占めている。燃油や飼料高騰の影響により採算性の確保が厳しい状況の中、沖合養殖システムや自動給餌システムの導入による養殖規模の拡大や、漁協直売所を活用した販路開拓に取り組み、持続可能な養殖システムや付加価値向上を実現した串間市西地区地域水産業再生委員会の取組をご紹介!

目次

地区生産額の9割以上を占める海面養殖業

宮崎県の最南端に位置する志布志湾に面した串間市西地区は、豊かな海洋環境を背景に海面養殖、小型底曳網、機船船曳網、曳縄一本釣りをはじめとする多種多様な沿岸漁業が営まれている。このうち、ブリやカンパチを中心とした海面養殖が、地区全体の生産額の9割以上を占めている。近年、沿岸漁業では漁獲量の減少や燃油高騰、養殖業では配合餌料の高騰の影響によって採算性の確保が厳しい状況となっている。そこで、同地区では漁村の活力を取り戻し、漁家経営の安定を図るために浜プランを策定し、漁業コストの削減を図るとともに、養殖規模の拡大や漁協直売所を活用した加工による付加価値の向上などに取り組んだ。

沖合養殖システムの導入と輸出先の拡大

同地区の基幹産業である海面養殖業は、海外への出荷が順調に伸びていたものの、現状以上に生産量を増やすことができない状況にあった。そこで、2018年に隣接海域の区画漁業権を新たに取得し、沖合養殖システムや自動給餌システムの導入の検討を開始した。2020年度には、国の補助事業である「もうかる漁業創設支援事業」を活用して大型浮沈式生け簀9基を導入し、また、大型給餌船や大型網洗浄ロボット、斃死回収装置の開発などを通して省人・省力化による経費削減に努め、輸出拡大に向けた生産性の高い養殖システムへの移行を実現させた。この結果、ブリの生産性は大幅に向上し輸出相手国を20カ国にまで伸ばすことができたことから、漁業所得は当初の計画値を大きく上回った。

ブリ養殖でASC認証を世界で初めて取得

同地区で導入したブリ養殖における大規模な沖合養殖システムは、自社で全ての人工種苗を生産する完全養殖を実現した。そして、養殖に関する国際認証制度であるASC認証を、ブリ養殖において世界で初めて取得し、餌には海の中で崩れにくく水質を汚さないEP餌料 を100%使用している。沖合での養殖は自然環境への負荷も小さく、まさに持続可能な取組だ。

漁協直売所や道の駅を活用した販路開拓

この他にも、漁協直売所や道の駅を活用した販路開拓による魚価・収入向上対策、より高い収益が見込める漁業との複合経営を推進する操業体制の多角化、磯焼け海域でのウニ除去や母藻を投入する水産資源の維持増大などに取り組んだ。また、漁業コスト削減のため、減速航行や船底清掃による燃油消費量の節減を図るとともに、非操業時の漁具保管の徹底や日々のメンテナンスによる漁具使用年数の延長に努めた。養殖ブリはご当地グルメとして数店舗の地元飲食店で取り扱われており、周辺地域の活性化にも繋がっている。同地区の取組は、海面養殖業における新たな可能性を切り開いた好事例といえ、今後の発展が期待される。

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